2%を下回る物価安定の背景
原油価格、円高、需給の緩み
2013年1月に2%の物価安定目標が掲げられてから、目標を達成できないまま10年の歳月が流れた。それまでの物価の推移を考えれば、そもそも目標が高すぎたという評価は今でも妥当だと思うが、消費者物価の上昇が2%の目標を超える状態が2年半も続いている。
日本銀行は物価安定目標を持続的・安定的に実現することを慎重に見極めていくスタンスだが、目標はすでに達成しており、それがいつまで続くのかというところに、世の中の関心は移ってきているようだ。
日本の消費者物価の長期的な推移を振り返ってみると、今起きている2%を超える物価上昇が、日本の今後の基調的な物価上昇率になることはなさそうだ。
日本では、第1次石油ショックが影響した1970年代中頃と、第2次石油ショックが影響した80年前後のそれぞれで大幅な物価上昇を経験したが、その後は消費税の導入や税率の引き上げといった特別な要因がないと、2%を超えて物価が上昇するということは起きなくなった(図表1)。
物価の安定基調をもたらした要因としては、二度のオイルショックを経て原油など資源価格が安定していたことと、変動相場制に移行した後の為替が85年のプラザ合意以降はほぼ円高基調で推移したため輸入物価の上昇が抑えられたことが挙げられる。
また、高度成長期が終わったことに加え、少子高齢化が進み日本経済の成熟化が進んだことが、国内需要の伸びを抑える要因となり、需給ひっ迫による物価上昇圧力が弱まったことも物価安定基調をもたらしたと言える。