「極力頑張らない働き方」を選んだ人が幸せにすらなれない決定的な理由Photo:PIXTA

「静かな退職」という考え方が、SNS上で若者を中心に広まっています。会社に所属しながら“まるで退職したかのように”最低限の業務しかしない働き方――これが支持を集める背景には、頑張っても認められないという諦めがあるのかもしれません。しかし、安易に「静かな退職」を選択することは危険です。(作家・ファンセールスコンサルタント 和田裕美)

若者の間でひそかなブーム?
「静かな退職」とは

「静かな退職」を選ぶ若者が増えているといいます。

「静かな退職」とは、実際に会社を辞めることではありません。意欲的に仕事に取り組むことをせず、最低限の業務のみを行う働き方のことです。この概念は、米国のZ世代を中心にSNSで広まりました。

 ただ、これを若者独自のエンタメやブームだと捉えることは危険だと思います。社内にロールモデルとなる先輩や上司がいないため、若者たちは頑張る基準が分からなくなってしまったのかもしれません。

 例えば、「頑張っても給料が上がらない」「会社に居場所がない」といった、自分の努力だけではどうにもできなかった時代を生きた上司や先輩が多く存在する会社で、その背中を見てモチベーションを高められる若者は多くないでしょう。

 人は環境次第で白にも黒にもなります。静かな退職を望む若者全員が、もとから「頑張っていない」「やる気がない」わけではなく、頑張るモチベーションが生まれづらい環境に迎合してしまった可能性に目を向けなければいけません。

 彼らも、学生時代をさかのぼれば、必ずどこかで努力した経験があるはずです。けれど、どこかのタイミングで頑張ることを諦めてしまった。それがいつ、どのタイミングだったのかを考えてみる必要があります。

 仕事や努力する意味を掘り下げることを教わらない。これはすごく恐いことです。「できない理由」を掘り下げる。「頑張る価値」を掘り下げる。そのときはつらいけれど、やっていかないと“うまく逃げる癖”だけが身に付いてしまうでしょう。