登場人物との“対話”によって
小説の結論は「たまたま」決まっていく

――『婚活マエストロ』の登場人物たちや人間関係も、結果的に「こうなった」という感じで描かれています。そのような描き方は最初から決められていたのですか?

 決めてないですね。小説を書いていると、よく登場人物の声が「聞こえる」ことがあります。作家さんによっては「キャラクターが勝手に動き出して……」と言ったりしますが、私の場合は動き出すというより「聞こえる」んです。

『成瀬』シリーズの主人公・成瀬あかりも、ああいう喋り方が聞こえてきたから、ああいう喋り方になった。最初から決めていたわけはありません。登場人物の動きとかは見えないんだけど、声が聞こえることは結構あります。

――聞こえる声の中には、自分が想像もしないような言葉もあったりしますか?

 自分の想像とは、わりと地続きかな。こういう物語を書いているから、ああ、あなたはそう言うんだね、という感じになることがほとんどです。意外性はあまりない。けれど、確認はしています。登場人物と「これだよね」って確認しながら書いている感じがします。

――登場人物と対話しながら内容を決めている?

ベストセラー作家が爆笑問題・太田光との出会いに「納得できる」と語るワケ『婚活マエストロ』(文芸春秋)

 他方で、ひらめきみたいなものもあります。鏡原さん(=『婚活マエストロ』作中の鏡原奈緒子)がタイマーじゃなくてストップウォッチを使って婚活パーティーの時間管理をするじゃないですか。(編集部注:鏡原はトークタイムの5分を計る際、「時間が溜まっていくのがいいんです。タイマーだと0になってしまうけど、ストップウォッチなら5になるじゃないですか。結婚するかもしれない二人の、最初の5分間なんです」と主張する)

 あの発想はまさに「思いつき」なんです。考えて出てきたというよりは、世界観を描く流れの中で、鏡原さんがストップウォッチを見てそう語っているところが思い浮かびました。これもたまたま偶然ですよね。たまたま思いついたことが書かれているのが、私の小説だと思っています。