巨大産業であるゲーム業界は、異業種も引き付けている。その中の大きな一社が電通。社内に200人超が属するゲーム関連の横断組織を立ち上げ、日本企業では唯一、世界最大のゲームプラットフォーマーである米Robloxと提携。共催社として東京ゲームショウの運営に加わるなど、全方位でゲーム事業を展開する。特集『50兆円をゲットだぜ!日本のゲーム』(全25回)の#5では広告企業である電通がゲームに本腰を入れるその理由に迫ろう。(ダイヤモンド編集部 鈴木洋子)
電通社内に「ゲームセンター」が出現!
全方位でゲームに全集中する理由とは?
2023年9月。国内最大手の広告会社グループである電通社内に「デンツウゲームセンター」が誕生した。といっても、東京・汐留の電通本社にアーケードゲームやメダルゲーム、クレーンゲームがきらきらの電飾とにぎやかな音響と共に並ぶあの施設ができたわけではない。
デンツウゲームセンター、とは電通のクリエイティブ組織を横断するバーチャル組織で、グループ内のゲーム関連事業を手掛けるあまたの部署の担当者が集まる組織なのだ。その数はなんと230人にも上る。ここであらゆるゲームジャンルに精通した人材をそろえ、ゲームコンテンツ領域に合ったマーケティングや広告を提供する。それのみならず「ゲームをマーケティングに使う取り組みとして、外部企業と協力して電通自身がゲームを作り、マーケティング活動に活用するという試みも始まっている」(伊藤光弘「デンツウゲームセンター」代表受付)というのだ。近い将来「電通が作ったゲーム」が登場する可能性もあるという。
電通グループのゲームとの向き合い方は、単なるゲーム内広告枠の販売や、ゲーム会社をクライアントとした広告事業にとどまらない。実は、ゲーム業界の要所要所に、電通グループはすでに布石を打っているのだ。
まず、国内のeスポーツの業界団体である日本eスポーツ連合(JeSU)と18年に専任代理店契約を締結。同年には高校生のeスポーツ大会である「ステージゼロ」をテレビ東京と共に主催し、その後毎年開催を続けている。
そして20年には、東京ゲームショウ(TGS)の共催社の座をコンペで落札した。TGSは主催がコンピュータエンターテインメント協会(CESA)で、長らく日経BPが単独で共催社となっていたが、電通はそれと並ぶ2社目の共催社となったのだ。
そして23年には世界最大のゲームプラットフォームを運営する、米Robloxと全面提携した(上写真は五十嵐博・電通グループグローバルCEO〈最高経営責任者〉とDavid Baszucki・Roblox共同創業者兼CEO)。まさにグループを挙げて「ゲームにどっぷりはまっている」のだ。
なぜ広告会社である電通がここまでゲームに突っ込むのか。
次ページで詳述するが、電通の調査によると、ゲーマーの平均年齢はかなり高く、セブン-イレブンの利用客の多くを占め、さらに高級ブランドも購入する傾向が強いという。「ゲームは子どものもの」というのは過去の認識で、もはやテレビや新聞などの四大メディアに迫る、いや、それ以上に大きな存在になりつつあるのだ。
そして、今後のゲーム産業が、あらゆる方向に成長を続け、さまざまな産業を巻き込んでいくことは間違いがない。そこで電通は200人以上の大量の人員を投入して何を狙い、、どのように実現しようとしているのか。明かしていこう。