2025年のエネルギー業界の重要テーマは米国によるエネルギー政策の大変更、それによりもたらされる世界へのさまざまな影響である。日本のエネルギー・環境政策にどのような影響があるのか。当面は米国の動向をいやが上にも注視するしかない。長期連載『エネルギー動乱』の本稿では、エネルギーの専門家が25年の10大テーマを挙げた。本稿では前編をお送りする。(エネルギーアナリスト 巽 直樹)
米国でトランプ前大統領復活
「現実を視よ」第2弾へ
選挙イヤーといわれた今年、11月に実施された米大統領選挙が最大のイベントになることは、最初から誰の目にも明らかであった。もっとも、世界で大型選挙が続いたものの、米大統領選以外の選挙は、おおむね予想通りの違和感のない結果となった。共通しているのは、ロシア以外では現政権が敗退ないしは後退したことだ。
そして、世界情勢の大きな分かれ道となりかねない米大統領選挙は、終盤まで大接戦が報じられたが、これらの事前予想はいったい何であったのかと思わせるような結末を迎えた。ふたを開けてみれば、ドナルド・トランプ前大統領が大統領選挙で圧勝したのみならず、議会上下院選挙においても共和党が圧勝し、米国をトリプルレッドに染め上げた。
この状況を踏まえると、来年のエネルギー業界の重要テーマを選ぶにあたり、真っ先に考慮するべきことは、今回の選挙で予想以上のクライマックスを世界に見せつけた米国によるエネルギー政策の大変更、それによりもたらされる国際社会へのさまざまな影響であることに異論は多くないであろう。
この米国の一連の選挙結果が明らかになる前、結果のいかんにかかわらず、日本のエネルギー・環境政策には大きな変化はないなどとする見方が散見された。しかし、少なくとも2026年の中間選挙までは共和党の政策遂行にストップをかけることは難しい。この状況に高をくくっていても良いか否かは、早晩明らかになって行くであろう。
よって、米国を起点としたエネルギー政策と産業の動向に、当面はいやが上にも注視するしかない。ウクライナ情勢の発生は、欧州への天然ガス供給が滞ったことにとどまらず、世界の資源供給に大きな影響をもたらした。エネルギー問題の「現実を視よ」と言わんばかりに、欧州および世界の目を覚ましたともいえる。
米国でのトランプ政権復活は、「現実を視よ」の第2弾となるだろう。経済・外交・安全保障など、多岐にわたる影響が及ぶことは避けられず、エネルギー・環境における各国政策や企業戦略の見直しを迫られる可能性が高い。以上から、25年の10大テーマに通底する考え方を一言で表すと、「現実直視」に尽きると筆者は考えている。