乗り合い保険代理店最大手・FPパートナーの社内キャンペーンに透ける、生保会社との「もたれ合い」の構図

訪問販売型の乗り合い代理店最大手、FPパートナーが、足元で上場記念キャンペーンを実施しているが、その内容に生保業界から驚きの声が上がっている。募集人に対する報奨額の大きさに加え、特定生保の商品を販売した際の「割増評価」が過大なためだ。その実態をレポートした。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

FPパートナーと生保会社の
もたれあいの構図

「プライム市場上場記念施策」――。訪問販売型の乗り合い代理店最大手、FPパートナー(以下、FPP)が、今まさに足元の2024年6〜12月にかけて実施している社内キャンペーンだ。

 FPPが東証グロース市場に株式上場したのが22年9月で、そのわずか1年後の23年9月には東証プライム市場に移行した。それを記念して行っているキャンペーンだが、この施策の内容に対して業界内から驚きの声と共に疑問の声が上がっている。

 理由は大きく二つある。

 一つ目は、募集人に支払われる報奨が巨額なことだ。報奨はストックオプションで、自社株をあらかじめ定められた価格で取得できる権利が付与される。その総額は優に2億円を超えており、上場しているとはいえ、一つの保険代理店が手掛けるキャンペーンとしては破格の金額といえる。

 二つ目は評価基準で、期間内に販売した生命保険の保険料の総額で判定されるが、特定の生保会社の商品にのみ「割増評価」がなされていることだ。アフラック生命保険を筆頭に、7社の生保会社にのみ割増評価がなされている。

 16年に改正された保険業法では、乗り合い代理店に対する規制が厳しくなった。規制の一つが比較推奨販売で、顧客の意向を把握し、意向に沿った同種の保険を複数提示しなければならないというものだ。保険業法が改正されたのは、顧客に最適な保険商品を選んでいるとうたいながら、保険会社から得られる手数料が高い保険商品に偏った販売を行っている事例が多数あり、顧客本位の業務運営が行われていなかったためだ。

 もっとも同種の保険を複数提示するといっても商品数が多いことから、代理店の独自基準で推奨する保険商品を絞り込むことが認められており、その選定理由を顧客に説明すればいいことになっている。

 実は、この推奨商品の絞り込みがブラックボックスとなっている。商品内容や保険会社によるアフターフォロー、代理店への保険会社の支援などによって絞り込みがなされるが、時に多額の広告料や人的支援などが加味されているとみられるからだ。

 顧客にとって有益な項目よりも、代理店にとって有益な項目に主眼を置いて保険商品が選定されているとすれば、それは顧客本位とは言い難く、立法趣旨に反することになる。ましてや、金融サービス提供法(金サ法)が改正され、24年2月1日からは保険会社と保険代理店も顧客に対し、「最善の利益を勘案しつつ、誠実かつ公正に業務を遂行する義務」を負っている。

 無論、保険代理店に対する保険会社の支援を全面的に否定するつもりはない。要は、そのバランスの取り方であり、姿勢の問題だ。

 今年の保険特集「週刊ダイヤモンド」24年4月27日・5月4日合併号の保険代理店相関図で示した通り、FPPが運営する来店型店舗「マネードクター・プレミア」(27店舗)のサイネージ広告に対し、広告費として5000万円を支払う生保がアフラックをはじめ複数ある。加えて、同年6月3日に配信した『「保険の見込み客」に翻弄されるFPパートナーの募集人たち、同社に群がる生保の実態【ヤメFPパートナー覆面座談会(下)】』では、アフラックと東京海上日動あんしん生命保険との蜜月ぶりについて報じている。

 両社の親密ぶりは、22年11月29日に行われたFPPの上場記念パーティの席次表からも見て取れる。黒木社長が陣取る7番テーブルには、アフラックの古出眞敏社長を含む3人に加え、あんしん生命幹部の2人の名前が記されており、黒木社長の両脇をしっかりと固めているかのようだ。

 こうした大型代理店に対する保険会社の過度な支援については、今まさに損害保険業界で議論されていることと根っこは同じだ。ビッグモーターや自動車ディーラーに対する損保会社の過度な営業支援の見返りに保険契約をもらっており、そこには顧客という視点がすっぽりと抜け落ちている。そうしたもたれ合いの構図に対し、金融庁が主催する有識者会議などでメスが入っている。

 もっとも、損保会社よりしたたかな生保会社は、「一線を超えないようにうまくやっている」と複数の生保幹部は言う。どこまでが通常の営業支援で、どこからが過度な営業支援なのか、線引きは難しい。では、実態はどうなのか。

 次ページでは、FPPのプライム市場上場記念施策の詳細な中身と生保会社とのもたれ合いの構図、それに対する生保会社の言い訳について詳述しよう。