生保・損保・代理店の正念場#25Photo:PIXTA

訪問販売型の乗り合い代理店最大手で、東証プライム市場に上場するFPパートナー。その時価総額は約1000億円を超え、他の上場代理店の追随を許さないが、同社を去る募集人が絶えない。特集『生保・損保・代理店の正念場』(全31回)の#25「覆面座談会(下)」では、リーズ(保険の見込み客)に翻弄される様を明かしてもらった。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

【座談会参加者】
佐藤氏(仮名):50代。10年以上勤務
川島氏(仮名):40代。10年前後の勤務
上田氏(仮名):30代。5年前後の勤務

保険が売れず、食えずに辞めていく人が多い
保険業界の慣習を変えたいと語っていた黒木社長

 株式時価総額が1000億円を超え、訪問販売型の乗り合い代理店最大手に躍進したFPパートナー(以下FPP)。創業者の黒木勉社長といえば、朝日信用金庫を経て入社したアリコジャパン(現メットライフ生命保険)で、約6000人の保険募集人(生命保険や損害保険の販売員)の頂点に立ったこともある人物だ。

 その黒木氏は、かつて「週刊ダイヤモンド」2017年4月29日・5月6日合併号で、「皆一生懸命に働いているが、食えずに辞めていく人が多い。年収100万~200万円台の人がたくさんいて、これではとても家族を養えない」と語っている。「保険をたくさん売る人が偉く、売れない募集人は能力不足で本人のせい」として、成績の上がらない募集人を使い捨ててきた保険業界の慣習を変えたいという、強い意思の現れだった。

 実際、同社は、他社でお荷物とされている売れない募集人を集めてきた。そして、売れない理由の大半は訪問先がないことから、リーズ(保険の見込み客)を大量に用意して訪問先を確保。手数料収入で安定して生活できるように、まずは保有契約1億円を目指すことを推奨してきた。

 折しも、手数料の高い保険商品に顧客を誘導することが問題視されていた頃で、1億円の保有があれば、手数料の多寡に左右されず顧客に最適な保険商品を提案できることに加え、アフターフォローに注力できるという狙いもあった。

 こうした黒木氏の考えに異論はないが、果たして実際のFPPはどうなのか。本特集の#20『FPパートナー「退職者続出」の深層、超複雑ブラックボックス報酬体系を募集人が暴露【ヤメFPパートナー覆面座談会(上)】』では、同社を去った募集人たちに、FPPの給料の実態を語ってもらったが、次ページの【ヤメFPパートナー覆面座談会(下)】では、リーズや推奨保険会社の実態に加え、退職者が激増している点についても語り合ってもらった。