地政学リスク、経済ルールや規制の見直し、生成AI等の技術革新、未知の感染症、気候変動など、事業環境の変化がかつてないほど大きくなり、経営の最適解も刻一刻と変わる「レジリエンス時代」が到来した。このような時代に、日本企業が生き残り成長していくには、どうすればいいのか――。PwCの各分野の専門家が最新の知見に基づいて上梓した『レジリエンス時代の最適ポートフォリオ戦略』にその答えがある。なぜ今、ファイナンス目線を備えた事業ポートフォリオ最適化が必要なのか、同書の内容を再編集して紹介する。

なぜ今、ファイナンス目線を備えた事業ポートフォリオ最適化が必要なのか〈PR〉

日本企業(TOPIX500)の43%はPBRが1倍未満
ROEが8%未満は40%にも及ぶ

 なぜ、事業ポートフォリオを検討するにあたってファイナンス目線が必要になるのだろうか。背景には、欧米企業に比べ、日本企業のPBR(株価純資産倍率)とROE(自己資本利益率)が低いという課題がある。

 詳しくは後述するが、PBRとROEは企業価値にも深く関連する指標である。その企業価値はファイナンスの概念であることから、ファイナンス目線が必要になるというわけである。

 日本企業のPBRの相対的な低さについて、PwCでは日本企業の収益性(ここでは売上高利益率を指す)の低さにあると分析している。それだけでなく、財務レバレッジも比較的低い(図表1)。投資家からはよく「日本企業は内部留保を溜め込みすぎている」と批判されるが、そのような批判とも整合しているといえよう(たとえば、他の条件を一定とすると、株主への合理的な配当を行うと時価総額が小さくなるため財務レバレッジも向上する)。