地政学リスク、経済ルールや規制の見直し、生成AI等の技術革新、未知の感染症、気候変動など、事業環境の変化がかつてないほど大きくなり、経営の最適解も刻一刻と変わる「レジリエンス時代」が到来した。このような時代に、日本企業が生き残り成長していくには、どうすればいいのか――。PwCの各分野の専門家が最新の知見に基づいて上梓した『レジリエンス時代の最適ポートフォリオ戦略』にその答えがある。新たな事業が加わったときのガバナンスのポイントについて、同書から一部を抜粋し、再編集して紹介する。

新たな事業が加わったとき、どのようにガバナンスの最適化を図ればいいか〈PR〉

グループガバナンスでは
「攻め」と「守り」の両輪のバランスが大事

 レジリエンス時代にあっては、事業ポートフォリオの最適化に取り組みながら、同時に企業グループの隅々までグループ経営戦略を行き届かせ、戦略を実行していかなければならない。そのために必要となるのが、グループ全体を統制するガバナンスだ。

 グループガバナンスでは、「攻め」と「守り」の両輪をバランスよく機能させることが重要だ。この両輪のバランスが取れなければ、グループ経営戦略を浸透させ、グループ経営を正しく導くことができない。

 事業環境の変化に応じた事業ポートフォリオの入れ替え、事業ポートフォリオを統制するメカニズム、新規事業のリスクをマネージするケイパビリティなど、本書ではこれらのすべてをガバナンスの機能と捉えている。そして、そのドライバーとなるのが、攻めのガバナンスでは「インセンティブ設計」、守りのガバナンスでは適正「牽制」である。

 具体的には、適切な組織設計や規定の整備、人事制度や報酬設計、リスクマネジメント体制、社内コミュニケーションなどが該当する。

事業ポートフォリオが変わると、
グループガバナンスはどう変化するか

 事業ポートフォリオを入れ替えると、グループを構成する事業の構成が変わる。それに伴い、組織も変化する。そうなれば、求められるグループガバナンスも変わってくる。

 たとえば、ある製造業グループの事業ポートフォリオに新たに金融事業が加わったとしよう。金融事業には許認可や高度なガバナンスのメカニズムが求められることから、グループガバナンスの一部の制度を金融事業で求められるレベルにまで厳格化しなければならない。

 一方で、グループに新しくベンチャー企業が加わったらどうだろうか。ベンチャーの成長にはある程度の自由度とスピードが求められることから、必要以上にきめ細かいガバナンス規定を適用すると、ベンチャーに期待するイノベーションを生み出す力は弱まってしまう可能性がある。そのため、ベンチャーの規模やステージに合わせて、柔軟なガバナンスを適用すべきである(図表1参照)。

 このように、グループの事業ポートフォリオ間で事業の性格が異なる場合は、特に注意が必要となる。