しかし、高齢者が少ない「人口ボーナス」時代の制度設計は、主たる有権者である現役世代に有利に作られやすい。また、少子化が訪れることを想定しにくいがために、世代間格差は拡大していく。世代間格差とは、生まれた年によって受益と負担の格差が生じることを指す。受益とは年金や医療・介護などの公共サービスとして得られるもので、負担は税金や保険料など政府に支払う金額になる。この世代での損得が今の高齢者と若者世代では1億円以上の格差が存在すると、政府発行の経済財政白書で試算されている。

 日本の公的年金は、「積立方式」ではなく、「賦課方式」で運営されている。積み立ては自分が支払った分が運用されて老後に支払われるというものだが、「賦課方式」とは現役世代が納めた保険料が高齢者の年金として支払われる。こうなると、得する世代と損する世代があからさまに生まれる。人口構成が変わりうると分かっていながらも、制度設計は20歳以上の有権者に有利なように作られているので、文句を言う人はいない。

有権者の多くは高齢の既得権益者
制度改革は一向に進まない

 結婚・出産についても劇的に変化してきている。お見合いのようなある意味強制的な結婚から自由な恋愛へと移行していく中で、非婚化・少子化は進み、合計特殊出生率が2を超えて総人口を維持できる国は先進国ではほぼなくなっていく。

 この少子化については、生き方の自由度や世代間格差が拡大する中で、有効な解消手段を見出した国はない。少子化は最終的には総人口が減り、民族の滅亡を招くことになる。それは地球規模で人類全体を見ても、同じことになる。恐竜が絶滅したように、人類も滅亡するのだ。国連の人口予測では、出生率が低位な推計では400年後に地球上の人類は1億人未満に縮小する。

 こうならないために、制度改革をすればいいのだが、選挙の有権者は高齢の既得権益者の割合が多いために、改革は一向に進むことがない。自分たちだけ良ければいい世代は将来の子ども・孫世代に負債を先送りして負担させていると分かったとしても、自制する行動などとれるはずがない。