若者を置き去りにする不動産市場
損をしないための「自宅戦略」とは
これらのことから、不動産市場を見ると多くのことに合点がいく。
まず、資産価格は上昇を続けている。マンションに至っては10年前の2倍の価格になっているのに、下がる気配すらない。このデメリットは若い世代が家を買えなくなることだ。持家率は年齢とともに上がるもので、いつの時代でも持てる者は高齢で、持たざる者は若者という構図になる。
そうであるからこそ、資産インフレは国民に許容される。日本の85歳以上の持家率が85.2%(国勢調査)である現在、制度設計は持ち家派有利に行われる。民主主義では多数派は常に有利になる。年金支給額を減らせないように、資産の目減りも許されない話なのである。
不動産はリバースモーゲージを使えば、キャッシュ化する手段になり得る。リバースモーゲージとは不動産を担保にお金を借りることで、金利は3%ほどになる。これに加えて、資産が膨れていれば国は相続税額が増えることになり、目くじらを立てるどころか、財源を増やしているに過ぎない。だからこそ、不動産価格の大暴落はないのだ。バブル崩壊は価格の急騰に対する行政的な対応であり、特殊事例でしかない。
一方で、家賃が上昇している。日本では持ち家促進政策を終始取ってきたのだから、賃貸層に対する優遇などほぼ存在しない。家賃が上昇していても、持ち家が買えなくても、子育て世代に対する支援は政治的に優先順位が低い。だからこそ、放置されるのだ。
そう考えると、自宅戦略は一択になる。早々に賃貸を切り上げて持ち家を取得するに限る。それも資産性を考慮すると、戸建よりもマンションの方が資産性は圧倒的に高い。価格下落のシナリオが描きにくい今は、取得時期を遅らせていいことは何もない。
(スタイルアクト(株)代表取締役/不動産コンサルタント 沖 有人)