「キミの挨拶のしかたを見ていると、
仕事ができそうな気がした」と、S部長
S部長はその理由を、後日、次のように語ったそうです。
「それは、I君が大きな声で『良い挨拶』をしていたからだよ。I君とは仕事をしたことがないので、どれほど活躍できるのか、正直、私にはわからない。けれど、キミの挨拶のしかたを見ていると、仕事ができそうな気がした。だから、やめさせてしまうのは惜しいと思ったんだ」
Iさんは、社内の廊下ですれ違うときも、エレベーターに乗るときも、社内の人にも社外の人にも、常に率先して挨拶をしていました。
Iさんの笑顔と気持ちの良い挨拶が、S部長の印象に強く残っていたのでしょう。
Iさんは、社内でも有名な「挨拶の達人」だったのです。
ときに挨拶は、ビジネスパーソンにとって、実務能力以上に重要になります。
私の大学時代の友人が、中途採用の人事面接を担当しています。彼女は「どれほど仕事ができても、挨拶がちゃんとできない人は採用しない」と話していました。
「新入社員ならまだしも、中途採用者にいまさら挨拶を教えるのはおかしい。最低限のマナーさえ身についていない人は採用できない」というのが彼女の採用方針です。
また彼女の会社は「気持ちの良い挨拶は、店舗の売上に直結する」と考えています。
事実、売上と挨拶は比例しているらしく、お客様への挨拶はもとより、スタッフ同士が「お疲れさまです」「ありがとう」「お願いします」と自発的に挨拶をする店舗は、確実に売上を伸ばしているそうです。