生き物たちは、驚くほど人間に似ている。ネズミは水に濡れた仲間を助けるために出かけるし、ゾウは亡くなった家族の死を悼む。どこか私たちの姿をみているようだ。
そんな動物たちの知られざる「社会的な」行動や、自然の偉大な驚異の数々を紹介するのが、ウォール・ストリート・ジャーナル、ガーディアンなど各紙で絶賛されている世界的話題作『動物のひみつ』(アシュリー・ウォード著、夏目大訳)だ。本書は、翻訳出版に従事する編集者や翻訳家、エージェントたち約200名が一堂に会し、その年に出版されたノンフィクション翻訳本の中から、投票によって「今年の3冊」を選出する恒例行事でも、見事1位に輝いた。出版業界のいわば“プロ”たちがこぞって、「今年の1位」として選んだのだ。今回は、芸能界随一の動物好きとして知られる、お笑いコンビ・ココリコの田中直樹さんに、本書の魅力についてインタビューした。(取材・構成/ダイヤモンド社コンテンツビジネス部)

本当の感情を押し殺してうわべを取り繕うチンパンジー、相手の顔色をうかがうボノボ…類人猿たちの“人間にそっくりな生態”の数々Photo:Adobe Stock ※画像はイメージです

チンパンジーとボノボの「視線の動き」の違い

――進化の系統上「人間に最も近い」と言われているチンパンジーとボノボは、集団を作って、社会性をお互いに発揮しながら生きています。本書の第9章でも、この2種類の霊長類の生態について詳しく紹介されていますが、田中さんはこのパートをどう読みましたか?

田中直樹(以下、田中) やっぱり人間にものすごく似ていて、僕たちの日常行動でも見られるような生態ばかりで面白かったです。

本当の感情を押し殺してうわべを取り繕うチンパンジー、相手の顔色をうかがうボノボ…類人猿たちの“人間にそっくりな生態”の数々田中直樹(たなか・なおき)
1992年に同級生の遠藤章造とお笑いコンビ「ココリコ」を結成。以降、テレビやラジオなど多くの番組に出演。役者としての顔も持ち、映画やドラマなど幅広く活動する。また芸能界随一の「海洋生物好き」として知られ、特にサメ好きを公言している。

 特に印象に残ったのが、視線の動きを観察する実験です。手に何か物を持っている類人猿の写真を見せると、チンパンジーはその物を重点的に見るのに対して、ボノボは類人猿の顔と物の両方を見るという違いがあるのには驚きました。

―とりわけボノボは、周りの「顔色」を見ながら行動しているんでしょうね。

田中 まさに、顔を見て、目の動きや表情から相手の内面を読み取ろうとしているんだと思います。

 僕たち人間の場合を考えると、初対面の人とのあいさつで相手が名刺を持っていても、名刺ばかりを見る人はあまりいません。名刺を持っているその人の「顔」を絶対見るはずです。でもチンパンジーは、顔よりも名刺に注目するんでしょうね。

 このエピソードは、チンパンジーよりもボノボの方が「ヒトに近い」ということを示しているような気がして、興味深かったです。

本当の感情を押し殺すチンパンジー

田中 少し話は逸れますが、本書にはベルベットモンキーとお酒のくだりがありました。

――ベルベットモンキーが酔っぱらう話ですね。

田中 このエピソードは、ものすごく面白かったです。

  「常時アルコールが手に入る環境にあるベルベットモンキーの飲酒行動を調べると、あまりにも人間にそっくりで驚いてしまう。だいたい6匹に1匹が定期的にある程度以上の酒を飲み、20匹に1匹くらいがアルコール依存になってしまう。(中略)一方で、6匹に1匹くらいは一切、酒を口にせず、残りは、時々ごく少量を飲むくらいで満足する」(本書P.564)

 集団内での飲酒行動のこうした個体差は、まさに人間みたいですよね。やっぱりサルと人間とは進化的に近いんだなと実感させられました。

 あとは、チンパンジーのこの話も印象的でした。

 「食べ物を見つければ嬉しいが、その感情が表に出てしまうと、せっかくの食べ物を奪われてしまう可能性が高まる。そういう時、チンパンジーは自分の見つけた食べ物の上に座り込んで、平静を装う。食べ物と自分の嬉しい感情の両方を隠すのだ。そして、誰も見ていない頃を見計らって急いで食べる」(本書P.582)

 この行動が、あまりに人間と似ていて笑いました。つまり、チンパンジーは本当の気持ちを押し殺して、うわべを取り繕うことができるということですよね。

 個人的には、逆にニヤニヤしている顔を見てみたいです。食べ物があるのをバレないようにしたいのに、どうしても喜びが勝って笑みがこぼれてしまっているような個体がもしいたら、それはそれで人間みたいで面白いなと想像が膨らみました

(本原稿は、アシュリー・ウォード著『動物のひみつ』〈夏目大訳〉に関連した書き下ろし記事です)