経営者が発信することで
周囲から信頼を得られた例

 創業者の濵渦伸次さんは、アラタナというEコマースの会社を立ち上げた経営者です。その後、ZOZOの創業者である前澤友作さんに評価され、アラタナはM&AによりZOZOグループ(当時はスタートトゥデイ)に入ります。濵渦さんはZOZOテクノロジーズの取締役を経て、2度目の起業でNOT A HOTELを立ち上げたのです。

 この事実を知っていれば「8億円をカートに入れる」と聞くだけよりも、信頼できるのではないでしょうか?「前澤さんに評価された経営者がやってるんだ」「2度目の起業なら信用できそうだな」と思った方も多いはずです。

 濵渦さんはもともとSNSで活発に発信している経営者でしたが、サイトがバズった当時はNOT A HOTELを作ろうと思ったきっかけや前澤さんとの関係については広く知られていませんでした。

 そこで濵渦さんは起業のきっかけや自身の経歴を改めてまとめ、「僕がNOT A HOTELを始めた本当の理由」というnoteを公開しました。すると、この記事をきっかけに濵渦さんと同社への理解が広まっていき、「そういう人がやっている事業なら信用できそう」「個人で別荘を買おうと思っていたけれどNOT A HOTELを買ってみようかな」という人が増えていったのです。

 事業が素晴らしいこと、プロダクトが最高であることは重要です。一方で、それだけでは「信頼」に到達することは難しい。まったく新しい事業、これまでにない事業であればなおさらです。そういうときこそ経営者個人がきちんと前に出て、経歴や人となりを伝えることが重要になります。SNSで経営者個人が発信することで、経営者自身の信頼が醸成されていくだけでなく、会社への信頼にもつながっていくのです。

P51図版同書より転載 拡大画像表示