ブランディングとは
真実を告げること

 ナイキやユニクロのブランディングを手がけたことでも有名な、ジョン・ジェイという世界的なクリエイティブディレクターがいます。

 彼は「ブランディングとは真実を告げることである」と語っています。

 一般的にブランディングと聞くと、うまいコピーを書いたり、オシャレなデザインのサイトを作ったり、カッコいい映像を作ったりすることを想起しがちです。「よく見せようとすること」がブランディングだと思いがちです。しかしジョン・ジェイ氏は、あくまで「真実を告げること」だと言うのです。彼の作るCMの多くがドキュメンタリータッチなのもそこに由来しているのでしょう。いわゆるファンタジーとして夢を見させるのではなく、真実をそのまま告げる。それこそが「信頼」につながるのです。

 特に今はSNSの時代です。着飾ってウソっぽいものを出してもメッキは簡単にはがれてしまいます。それよりも経営者がやるべきなのは、より魅力的な真実を生み出すこと。そして、その真実をそのまま発信すること。それこそが最高の「ブランディング」です。

 ちなみに経営者自身がメディアとなり、発信の主体を「経営者」に絞ることは、受け取る側から見ても理に適っています。

 従来の企業の発信は「面」で行いがちでした。コーポレートサイトや広報による発信、オウンドメディアや外部メディアを通した発信など、発信を強化しようとすればするほど、企業は発信する人数や情報量を増やそうとします。しかし問題は、消費者側にそれだけの情報を受け取る体制がなくなっていることです。スマホやブラウザの向こう側の人たちは、XやFacebookを眺めたり、NetflixやYouTube、TikTokを見たりするのに大忙しです。そんななか御社の情報を受け取ってもらえるというのは幻想に近いのです。

 そこで企業と受け取る側の人たちとの接点を「たった一点」にすることが有効なのです。少なくとも発信の初期フェーズでは「経営者を消費者との唯一のタッチポイントに絞る」ことは理に適っています。まず突破口を作るのが先。会社として「面」で発信していくのはその後でも遅くありません。

P54図版同書より転載 拡大画像表示