その質問とは、「では具体的にどのように大切にするのか。どのような施策で業績を上げるのか」です(ちなみに本当に優れた部下は、そのような質問をされなくても、具体策を発言するものです)。

 この質問に対して、過去の例や他社の例など周囲の人が納得する事例やデータを示しながら、また、お客さまが望むQPS(Quality, Price, Service)や5つのP(Products, Price, Place, Promotion, Partner)など、経営理論に即しながら具体化し、かつ、自分はどう対応するのかという説明ができる人は思考力が高く、仕事ができる人と言えます。

 逆に「頑張ります」程度の言葉で終わってしまう人は思考力に問題がありそうです。

 つまり、思考力が高い人の発言は内容に具体性があり、思考力が低い人の発言は方向性が合っていたとしても具体的な話ができずに終わってしまいます。

 もし上司が思考力の低い部下にアドバイスするとしたら、普段から具体性のある話を求めるとともに、自分の仕事に関係する本の中で、難易度が高く読み応えのある本をしっかり読むことを勧めるといいでしょう。難しいと感じるはずですが、読み飛ばしたりせずに「きちんと読む」ことで思考力が高まるはずです。

口先だけの人を
評価してはいけない

 部下が高い思考力を持っているかどうかを見極めることは、リーダーの大切な仕事ですが、一方でリーダー自身の思考力も部下に試されていることを忘れてはなりません。

 リーダーが「お客さまを大切にしよう」とか「業績を上げよう」と言うだけで、具体的な指示を出さなければ部下は戸惑うでしょうし、上司としての力量に疑念を抱くでしょう。

 また、思考力が低いリーダーは、部下が「頑張ります」といったような漠然とした発言に納得してしまいます。それでは議論が深まりません。会議では漠然とした発言がたくさん出ることがあります。それに納得したり聞き流したりせずに、詰めて聞けるかどうかに上司の思考力の水準が現れます。

 次に実行力。要領のいい人なら、上司の質問に対して、及第点の答えを口にすることができるでしょうが、それで終わる口先だけの人は評価できません。

 評価のポイントは、「口にしたこと」を実行し、実績として示すことができるかどうかです。口にしたことを確実に実行することはビジネスパーソンとして非常に重要であり、部下自身の実行力を高めるファーストステップでもあります。

 一方、「口にしたことは実行しなさい」を言われると、余計な仕事を増やしたくないと思うのか何も口にしなくなる人も出てきます。

 実行力を高めるセカンドステップは、「思ったこと」を実行する習慣を付けることです。

 思ったことは仕事に関係なくても構いません。海外の美術館を巡りたい、温泉旅行に行きたい、人気のレストランで食事がしたい、本を読みたい、習い事に通いたい……そんなことを思っても、忙しさを言い訳にしてやらない人は結構います。

 思ったことをやらないでいると、「やらない癖」がついてしまいます。そして、やらないのが当たり前になり、実行力が身に付きません。もちろん、全てが実行できるわけではありませんが、やってみることが大切なのです。

 思ったことをやる習慣が付けば、やがて結果が出ます。結果が出れば自信が付くし、上司や周りも評価するようになり、レベルがどんどん上がり、それがまた評価や昇進に反映され、権限やお金の自由度が増えるので、より大きなことが実行できる環境になるという良い循環に入ります。

 言ったことを守る、思ったことをやるということを続けている人は、必ず人生のステージが上がります