食生活において
微生物が一番怖い!
私はもっとも怖いのは微生物だ、と考えます。腸管出血性大腸菌やカンピロバクター、ノロウイルスは、食べて体の中に取り込むと、一部が腸管内に辿り着き増殖して、体に深刻な悪影響を及ぼします。ノロウイルスは冬に流行し、食中毒の中で毎年、もっとも多い患者数を記録します。微生物の中には、食品中で毒素を作り、その毒素が激しい症状を引き起こすタイプもいます。
ボツリヌス菌は、成人にも深刻な影響を与えます。自家製の野菜や肉などの瓶詰め、魚の発酵食品、事業者の作った真空パックの加工品などで、亡くなったり意識不明の重体になったりするのです。ボツリヌス菌は土壌や川、海などに普通にいるので、原材料の洗浄が足りずボツリヌス菌が残っていたりすると、加熱した際にボツリヌス菌が芽胞を作って生き残ります。
すぐに食べれば菌数は少なく健康影響にはつながりません。しかし、容器中で保存されると酸素の少ない条件下で増殖して毒素を作り出すことがあります。「少々泥つきでも自然のものだから大丈夫」「無添加の自家製瓶詰めだから安全」などと言う人が時々いますが、とんでもない思い込み。食品や菌の性質に応じた対策が必要です。
このほかにも、微生物の中には驚くような作用を引き起こす種類があります。たとえば、作った翌日に食べるカレーライスなどで食中毒を招いてしまうウェルシュ菌、チャーハンによる食中毒の原因となるセレウス菌、魚に付き水揚げ後の流通や加工工程で増殖しアレルギーに似た症状を引き起こすヒスタミン産生菌などです。どれも身近で、多数の食中毒事故が起きています。
かんたんで最高の
予防策とは?
なのに、微生物が原因の食中毒はあまりにも軽視され過ぎです。厚生労働省の食中毒統計によると例年、全国で計1~2万人の食中毒患者が発生し、その8割以上の原因が微生物である細菌とウイルスです。残る2割弱の食中毒患者の原因は、寄生虫やフグ毒、キノコ毒など。残留農薬や食品添加物による食中毒はこの数十年、農薬が食品に混入された犯罪を除けば記録されていません。