児童虐待や暴行、性加害…子どもを狙った卑劣な犯罪のニュースに心を痛める人は多い。
令和5年における18歳未満の子どもに対する不同意わいせつの検挙件数は1694件、不同意性交等の検挙件数は709件*に上る。
子どもの身を守るために、親として何ができるのだろうか。
本記事では、池上彰総監修の『いのちをまもる図鑑』(ダイヤモンド社)で第4章「犯罪からいのちを守る」の監修を務めた危機管理の専門家・国崎信江氏に話を聞いた。
(取材・構成/杉本透子)
*出典:警察庁「令和5年における少年非行及び子供の性被害の状況」
「秘密にしろ」と言われたことはすべて保護者に言うように伝える
――『いのちをまもる図鑑』の中に、子どもが性被害に遭う過程で「性的グルーミング」が行われることがある、と書かれていました。どのような手口なのでしょうか。
国崎信江氏(以下、国崎):性加害をすることを目的に特別扱いしたり、優しい言葉を掛けたりして取り込もうとすることです。プレッシャーを与えてくる場合もあり、例えば「これを話したら〇〇してあげない」「親に話したらひどいことになる」などと脅して口封じをしようとします。
そうした圧力を掛けられたときに、子ども自身に「おかしい」と気づいてもらうためには、「『誰にも言っちゃだめ』『親に言っちゃダメ』というのはほとんどが悪いことだから、必ずお父さんお母さんに言ってね」と日頃から子どもに伝えておくことです。
子ども同士でも「秘密にしとけよ」なんてお友達に脅されることもありますから、親が事例を示して、「『こんなこと言ったらお父さんお母さんが困るよ』っていう人がいたとしても嘘だよ。お父さんお母さんは全然困らないよ」「言ってくれないほうが悲しいんだよ」と言ってあげることですね。
「『秘密』って言われたらそれはほとんどが悪いことだから、ちゃんとお父さんお母さんに言ってね。必ず解決してあげるから悩まなくていいんだよ」と伝えておくと、お子さんは安心できると思います。
――先に伝えておけば、何かあったときに子どもが話しやすいですね。
「試される」という罠
国崎:大人でも脅されるとなかなか被害を打ち明けられません。そして「脅される」だけではなく、「試される」場合もあります。恋人から「本当に愛してるならこれぐらいできるでしょ?」と言われたり、友達から「私たち友達じゃなかったの?」と言われ、やりたくないことをやらされてしまうケースです。
恋人に裸の写真を送ってしまうというのもその一つで、「本当に好きなら送って」「誰にも見せないから」と言われて送ってしまうんですね。
――誘う手口も巧妙なのですね。
国崎:振り込め詐欺などは大人が引っかかっているわけで、騙そうとする側は何枚もうわ手です。なので、子どもに対しても「騙されちゃいけないよ」と言うのではなく、「騙そうとする人って本当に多いよ」「うまく騙してくるんだよ」というふうに、より具体的な言い方で注意をうながすのがいいですね。
※本稿は、『いのちをまもる図鑑』に関連した書き下ろしインタビュー記事です。
国崎信江(くにざき・のぶえ)
危機管理アドバイザー。危機管理教育研究所代表
女性として、生活者の視点で防災・防犯・事故防止対策を提唱している。国や自治体の防災関連の委員を歴任。『10才からの防犯・防災』(永岡書店)や『おまもりえほん』(日本図書センター)などの監修もつとめる。