以前、この方にお会いしたとき、「こんなことを始めたんだよ」と渡された名刺に「CEO」と書いてあって、私も驚きました。
「えっ、顧問じゃないんですか?」
「いや、CEOをやらされることになってね――」
嬉しそうにそう話していたこの方は、60代のときも別の会社で社長を務めていました。そのとき一緒にビジネスをしていた周囲の経営者や経営幹部は、40代から50代が多かった。だから70代になっても50代、60代の経営者たちと生きたネットワークがあり、十分CEOが務まるのです。
還暦を過ぎても活躍している人は、還暦までそれぞれの分野の最前線で仕事をしているのです。
これが55歳で役職定年を迎えて早々に第一線から外れてしまうと、最前線のネットワークが切れてしまい、60歳になった頃には培った人脈が途絶えてしまうでしょう。
50歳を超えた社員が引退モードで仕事をしていても、「もう役職定年だし」「還暦も近いし」といった具合に、何となく許されてしまう雰囲気が世の企業にはあります。会社も「配慮」して、役職定年後は第一線から外れた負荷の低いポジションに異動させるかもしれません。
しかし周囲に許されるがまま還暦まで引退モードでいたら、自分のやる気もその気もなくなってしまいます。
だから還暦を迎えた後も活躍したいのであれば、できるだけ事業の最前線で切った張ったの世界に身を置いたほうがよいのです。引退ポジションに配置された人は自ら異動を希望したり、場合によっては転職を考えたりするほうがよいと思います。現在は50代なら転職できますが、60歳を超えるとさすがに難しくなります。
「引退モード」の人でも
生涯年収を上げられる“最後の手段”
「定年後は顧問になって、ご意見番的な立場で仕事をしたい」という顧問モードに入ってしまう人も少なくありません。しかし、世の中でご意見番の需要は非常に限られていますし、実際に顧問になれるのは相当な実績を残した人に限られます。