新型「プレリュード」から採用の「Honda S+ Shift」の独自性を実感
次世代e:HEVでは、こうした仕組みを継承しつつ、燃焼効率の大幅改善により、燃費と各国地域で今後さらに規制が強化される環境規制に対応する性能を上げた新型エンジンを導入する。
「フィット」や「ヴェゼル」など、グローバルでBセグメントと呼ばれるモデル用には1.5Lエンジンを、また「CR‐V」などC/Dセグメント向けには2.0Lエンジンを新開発した。
また、電動AWD(四輪駆動)用のリアモーターユニットは、次世代EV「ゼロシリーズ」と共通性を持たせた。
さらに、C/Dセグメント用では次世代e:HEV搭載を念頭とした、新型プラットフォームを開発中だ。
こうした次世代e:HEVの特徴が、「五感」に響く技術だ。
燃費が良く、軽快でスムーズに走るのは、HVとして当たり前だ。ユーザーにホンダのHVを選んでもらうためには、分かりやすい「ホンダらしさ」が必要だというわけだ。
そこで新たに導入したのは「Honda S+ Shift」である。
20年にフィット e:HEVから採用している、車速とエンジンサウンドを連動させる制御「リニアシフトコントロール」を大幅に進化させた。
今回の試乗では、現行「ヴェゼル」にBセグメント用のe:HEVを移植したテスト車両と現行ヴェゼルを乗り比べた。
すると、緩やかな加速時のモーター走行を維持する時間が長く、またエンジンがかかる際の振動や音もかなり軽減されているのが分かる。電動AWDによる回頭性・旋回性の良さも実感できた。
さらに、ドライブモードをスポーツにすると、Honda S+ Shiftが作動する。心地良いサウンドでシフトアップとシフトダウンを行ったり、アクセルレスポンスの利きなどが変わる。
Honda S+ Shiftは、25年発売の新型「プレリュード」を皮切りに、次世代e:HEV搭載の全モデルに随時展開されていく予定だ。
この新型プレリュードの走りが、すこぶる良い。
車体は、現行「シビックタイプR」を使い、乗り心地が良い方向のセットアップを施したという。そこにシビック e:HEVのユニットを搭載して、Honda S+ Shiftを加えたというコンビネーションである。
ドライブモードは、コンフォート、GT、スポーツの3つで、それぞれに対してHonda S+ Shiftをドライバーがボタン操作でオン・オフすることができる。
合計6種類のドライブモードがあることになるが、それぞれでクルマのキャラクターがはっきり変わるのだ。
最近は国産車では希少なクーペモデルのプレリュードが、ホンダの次世代技術を先導していくことだろう。
グローバル市場を見渡せば、EVシフトが「踊り場にある」という印象だ。
15年のCOP21(国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議)のパリ協定を起点に、欧州連合の行政執行機関である欧州委員会が欧州グリーンディール政策を推進。そこに、中国と米国の政治的な思惑が絡み合い、10年代後半からESG投資バブルが起こり、それがEVシフトを一気に押し上げた。
ESG投資とは、財務情報だけではなく、環境、ソーシャル、ガバナンスを加味した投資のことだ。
そのESG投資バブルが一段落し、さらに中国経済が低迷し、米国では第2次トランプ政権が25年1月にキックオフとなる。
北米市場への依存度が高い、スバルとホンダだが、事業戦略は当然それぞれ違う。それでも、本格的なEV普及期までの駆動システムとして、ハイブリッド戦略は両社の生き残りを懸けた極めて重要な領域であることを、今回の取材を通じて再確認した。