「読めない」「読んでも忘れる」がなくなるカギ

「読んでも忘れる」がなくなる~トヨタ式「紙1枚」を使った読書法がすごすぎた早く読めて、忘れない、思考力が深まる 「紙1枚! 」読書法』(浅田すぐる 著、SBクリエイティブ)

 とり急ぎ、本稿を理解・実践していくうえで、あなたと私の間で共通了解にしておきたいポイントは、次の1点だけでOKです。

「紙1枚」の本質=「制約」を活用した「システム2」の発動

 デジタル化の進展により、「浅い」思考だけでも大半のことが済ませられる時代です。だからこそ、「紙1枚」にまとめる技術を通じて、「システム2」を少しずつ取り戻していってほしい。そうすれば、「本が読めない、読んでも忘れてしまう、人に聞かれてもうまく説明できない」といった悩みは、全て解消していきます。

 ただ、くれぐれも勘違いしないでほしいのは、未来永劫(えいごう)ずっと「紙1枚」にまとめる読書をしようと言っているわけではない点です。

 「紙1枚」による「スロー」思考のゴールは、「紙0枚」。すなわち、デジタル上や何も書けない状態でも、紙媒体と遜色ないレベルのパフォーマンスが発揮できること。

 「バイリテラシー」。ここが、2020年代のカギなのです。

「紙1枚」を実現する「3つの制約」とは? 

 では、実際にどうやって「紙1枚」にまとめていくのか。その本質的要素は、次の3つの「制約」に集約されます。

1.「枠=フレーム」という「制約」を活用する
2.「What?」「Why?」「How?」を「制約」として活用する
3.「ポイント3つ前後」を「制約」にして活用する

 前ページで紹介したトヨタの「紙1枚」資料を、もう一度眺めてみてください。改めて観察してみると、いずれの資料も「枠=フレーム」で囲われていることに気がつくはずです。

 今でも私は資料作成時、文章ではなく「枠」を作成することからスタートします。空っぽの「フレーム」を何個か作っておくと、何とかして枠内に収めようといった意識が、自然と強くなるからです。「紙1枚」だけでなく「枠内に収めること」を、更なる「制約」にしてしまう。そうすることで、「深める」思考をより意図的に促していくのです。

 加えて、心理的にも見逃せないポイントがあって、人には「空白を見ると埋めたくなる」性質があります。私は今、4歳児と2歳児の子育てをしながら本書を執筆していますが、子供達の行動を見ていても、「シールを空白のページに貼る」「ボールを持つと、どこかの隙間に投げ込む」「トンネルを見つけるとテンションが突然マックスになる」、等々。

 心理学や脳科学の知見を持ち出すまでもなく、彼らの行動を見ていると「穴=空白=ブランクを見ると放ってはおけない」は、十分に本質を突いているように感じます。

 今後もし、頭がゴチャゴチャして考えがまとまらない状態に陥ってしまったとしたら……。「紙1枚」に「枠」を書いて、埋めながら考えてみる。

 このシンプルな動作を、気軽にやってみてほしいのです。たったこれだけでも、リカバリーやブレイクスルーの体験は十分にできます。ぜひ体感してみてください。