次世代リーダー育成に向け
全編英語の研修を実施
外国人人材が日本で生活するうえで、言葉に加えて文化や慣習の違いが壁になることもある。マネーフォワードは、入社前に日本の文化・慣習などに関するレクチャーを行うほか、入社のために来日する人のビザの発給や航空券の手配、役所の手続きや銀行口座の開設、携帯電話の契約、仮住まいの家賃補助など生活全般をサポートする。人事部門には、何でも気軽に相談できる窓口を設けている。
有志の日本人社員とNon-Japaneseメンバーが互いの言語や文化を一対一で学び合う「TERAKOYA」という活動も行っている。日本語がまったくできない人には、バイリンガルの日本人社員をアサインするなど、マッチングは会社側で行うが、具体的な活動内容は本人たちに任せている。たとえば、週に1回程度オンラインで会話したり、ランチを食べながら雑談したり、休日に一緒に出かけたりして、親交を深める。この活動には、エンジニア組織以外の日本人社員も多く参加しており、日頃接することが少ない他部署の社員とのネットワークを広げる機会にもなっている。
国籍にかかわらず誰もが働きやすい環境を整備するために、エンジニア組織では英語の公用語化を進めている。エンジニア全員がTOEICで700点以上を目指しており、現在9割以上がその水準に達した。機械翻訳なども活用しながら、Non-Japaneseメンバーとの仕事は会議を含めて英語で進めている。
外国人人材が増える中で、言語ではなく文化の違いによるコミュニケーションギャップがどういう時に生じるかという知見も蓄積されてきた。そこで、異文化コミュニケーションに関する実践的なワークショップを各部署で実施する準備を進めているところである。
日本語不問採用を始めた当初は、社員がどう反応するのか不安もあったが、「組織の多様性が高まることを前向きにとらえ、積極的に英語でコミュニケーションを図る日本人社員が大多数」であることに石原氏は安堵したという。また、組織の多様性の高さを評価して、マネーフォワードを志望する日本人も増えている。
目下の課題は、外国人リーダーの育成である。海外出身でマネジャー職に就く人材も出てきたが、従来、次世代リーダーを育成する研修はすべて日本語で行われていた。研修プログラムは本部長クラス向けと部長クラス向けの2つに分かれており、後者については英語のプログラムを開発、2024年11月から約30人が初めて受講することになった。経営陣を交えた合宿や受講生同士のグループセッションなど各種のプログラムが、約半年間にわたって随時行われる。
「何より大切なのは、マネーフォワードが大切にするミッション、ビジョン、バリュー、カルチャーを共有できるかどうか。当社が目指す世界観に共鳴できる人であれば国籍に関係なく迎え入れ、誰もが活躍できる組織を追求していきます」。石原氏はそう語った。