障がい者中心のBPO組織
850を超える業務を受託

  ソフトウェアのテスト・品質保証を軸に、ソフトウェア開発やコンサルティングサービスなど総合IT企業として急成長を続けるSHIFT。連結ベースの従業員数は創業から19年で1万人を超え、直近では年間2000人を上回る採用を実施している。

 同社は、多様な人材を採用し、一人ひとりが活躍できる環境を整備することで、成長基盤を築いてきた。年齢や性別、国籍、学歴は採用を左右する要素にならず、障がいの有無も問わない。「個人の資質や素養を重視し、会社が求める役割に合う人を採用するのが基本です」と、同社ビジネスサポート部副部長の北川愛氏は語る。

「個」の可能性を解き放ち多様性を組織の力に変えるSHIFT人事総務統括部ビジネスサポート部ビジネスサポート1グループ グループ長の大泉将氏(左)と同部副部長の北川愛氏。

  同社は障がい者雇用を積極的に推し進め、現在の障がい者雇用率(単体ベース)は法定雇用率を上回る2.7%(注1)となっているが、特筆すべきは定着率の高さである。障がい者の職場定着率(1年)は情報通信業の平均が60.2%であるのに対し、同社では86.9%(注2)となっている。
注1)2024年6月時点。 注2)2024年8月期実績。

 その要因について北川氏は、「入社してから、できる仕事の幅が広がり、自分のキャリアが開けることによる成長実感。そして、チームで仕事をする喜びが定着率の高さにつながっているのだと思います」と説明する。

 SHIFTでは、社内BPO組織であるビジネスサポート部で、障がい者雇用を希望して就業するメンバーを一括して受け入れている。約200人の同部員のうち9割が障害者手帳を持つ。

  ビジネスサポート部は、社内各部署から業務のアウトソーシングを受けるビジネスサポート1グループと、部内の企画・管理機能であるビジネスサポート2グループに分かれる。

 1グループは、障がいのあるメンバーそれぞれの得意分野に応じたチームを編成しており、ソフトウェアテスト、営業事務、業務改善、ウェブ制作、映像制作など23のチームがある。アート作品の制作やフラワーアレンジメント、社内のマッサージルームを運営するチームもあるなど、実に多彩だ。

 これだけ幅広い業務を受託できるのは、同社のコアコンピタンスである「分解」のノウハウを活かしているからだ。SHIFTは、製造業向けの業務改善コンサルティングを祖業とする。製造プロセスを業務内容や手順によって徹底的に分解し、ベテランやスペシャリストにしかできない領域と標準化・形式知化できる領域に区分する。後者については各業務を得意な人が分担したり、機械化・自動化を進めたりすると同時に、前者の領域ではベテラン、スペシャリストに創造性を発揮してもらう。これによって生産性と付加価値を高めるのがSHIFTの強みだ。

 同社がIT未経験者でも資質や素養があれば積極採用し、短期間で戦力化できるのは、業務を細かく分解して、その業務に応じた能力開発プログラムを整備するなど、仕組み化・構造化が進んでいるからである。

 ビジネスサポート部でも、他部署の業務プロセスを分解、可視化して、「私たちがこの業務を受託すれば、あなたの部署はこれだけ生産性が上がります」といった提案をする。受託する業務の標準化や手順書作成なども、自分たちで行う。そのようにして受託できる業務をみずから創出し、BPO組織としての業容を広げてきた。請け負う業務の数は、いまでは年間850件を超えており、「バックオフィスのノンコア業務のほとんどを受託できるようになっています」と、同部ビジネスサポート1グループのグループ長である大泉将氏は述べる。