日産 消滅危機#13Photo:Drew Angerer/gettyimages

ホンダと日産自動車が経営統合して生き残るための鍵は何なのか──。論点は数多いが、あまり論じられていないポイントに、両社の弱体化した「政治力」の立て直しがある。特集『日産 消滅危機』の#13では、ホンダと日産、トヨタ自動車などの政治献金額や米国でのロビー活動費を比較しながら、各社の政界工作の優劣や課題を明らかにする。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文)

自民党への献金額、米国でのロビー活動費で
意外な格差を生んでいる各メーカーの「社風」

 日米欧などの政府が近年、脱炭素や経済安全保障のために数千億円から数兆円規模の補助金を乱発している。その大盤振る舞いの是非はともかくとして、巨額の補助金を得られるかどうかが企業の競争力を左右するようになったことは間違いない。

 つまり、企業にとって政界工作やロビイングの重要性が高まっているのだ。しかし、2023~24年に、ホンダと日産自動車の経営統合後の行く末に不安を抱かせる出来事があった。それは、日本政府が電池産業に投下した総額7000億円規模の補助金の争奪戦で、日産が大敗を喫したという事実だ。

 最大のライバルであるトヨタ自動車陣営(パナソニック ホールディングスとの合弁会社のプライムプラネットエナジー&ソリューションズ〈PPES〉などを含む)は同補助金から2034億円を、ホンダ陣営(GSユアサなど含む)は1587億円を獲得した。

 これに対し、日産が確保できた同補助金は557億円にすぎなかった。ホンダの3分の1程度の額であり、車載バッテリーが商品力を決める電気自動車(EV)の市場シェア争いで不利になりかねない事態だ。

 実は、補助金争奪戦での敗北は、日産の政界工作やロビイングの弱さの表れといえる。

 次ページでは、トヨタ、ホンダ、日産など自動車メーカー、自動車サプライヤーなどのの自民党への政治献金額や、日系自動車大手3社が米国で投じているロビー活動費の推移を比較しながら、各社の政界工作の優劣や課題を明らかにする。