経営の中枢 CFOに聞く!#8Photo by Masato Kato

脱炭素の潮流の中、二酸化炭素の排出量が多い鉄鋼業は、株式市場から高評価を得るのが容易ではない。しかも、たとえ事業環境が厳しくてもカーボンニュートラルに向けた大規模な投資は続けなければならず、財務戦略には短期、中長期両方の視点が不可欠だ。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、国内鉄鋼大手JFEホールディングスの寺畑雅史副社長CFOに、株価アップや財務健全化に向けた施策を語ってもらった。(聞き手/ダイヤモンド編集部 今枝翔太郎)

この中期は投資と財務健全性を両立
実力に対して株価が安過ぎる?

――2021~24年度の中期経営計画が終盤に差し掛かってきました。

「選択と集中」を掲げ、効率的な投資の実行と、財務健全性の両立を進めてきました。

 グリーントランスフォーメーション(GX)やデジタルトランスフォーメーション(DX)といった投資は、ほぼ計画通りに進んでいます。財務健全性については、目標はDEレシオ(負債資本倍率)0.7倍程度、EBITDA有利子負債倍率3倍程度を目標としていて、こちらもおおむね順調に推移してきました。

 この中期は資産圧縮にも取り組んでいて、収益貢献度の低い事業や資産の見直しを進めてきました。例えば、高炉を休止した京浜地区では、土地の一部を450億円で売却しました。残りの土地は、売却や賃貸を組み合わせてビジネスの可能性を探っていきます。京浜地区の土地利用にかかる費用は、できるだけこの土地のマネジメントで賄っていきたいと考えています。

――中計の達成に向けて順調に進んでいるようですが、株式市場からの評価は高いとはいえないようです。JFEホールディングス(HD)の株価は1700円前後で推移していて、時価総額では競合の日本製鉄の3分の1程度の水準です。実力に対して、株価が安過ぎるのでは?

次ページでは、寺畑氏がCFOとして特に重要なKPI(重要業績評価指標)は株価だと断じ、株主還元の方針や、脱炭素投資がかさむ中での財務健全化策を明らかにする。旧川崎製鉄(現JFE)とJFEでそれぞれ約20年を過ごしてきた寺畑氏は、統合後の変化にも言及する。CFOの立場から見た「統合のメリット」とは。