同じように、「上司が自身の能力やスキルを言語化してくれた群」の39.9%が「私はキャリア自律ができていると思う」と答えたのに対し、「してくれなかった群」は15.3%。「上司が、自分のモチベーションの源泉を探るようなコミュニケーションをしてくれた群」の36.7%が「私はキャリア自律ができていると思う」と答えたのに対し、「してくれなかった群」は16.8%となっています。
ほかにも、「上司から、新しい業務、機会で得られる経験やスキルの説明がなされた」群と「なされなかった」群、「上司が、自分の仕事のスタイルを把握しようとしてくれた」群と「してくれなかった」群でも、「私はキャリア自律ができていると思う」と回答した人の割合は、それぞれ2倍以上の開きが出ています。上司がどれくらい自分を理解しようとしてくれたかが、キャリア自律意識に大きく影響を与えていることが読み取れます。
一次情報に触れ、就職活動を通じて
自分のキャリア観を言語化していこう
これから就職活動を進める学生は、これからの長い人生でキャリアオーナーシップを高めるために、どんな準備を進めていくといいのでしょう。まず大切なのは、自分が大事にしたい価値観を言語化するために、過去の経験を掘り下げ自己理解を深めることです。同時に、一次情報に触れながら企業の理解を深める環境探索も欠かせません。インターンシップなどで実際の職場を見て、社員の働く様子に触れ、そこで自分自身がどんなところに共感したり違和感を抱いたりするかを整理していきましょう。
企業側には、個人が大事にしている価値観について、対話する機会を増やすことが求められるでしょう。就職活動直後の2024年卒学生を対象にした調査では、「入社予定企業が自分のキャリアを考えてくれた」ということが、「自分の基準で進路選択ができた」という思いに寄与していることがわかっています。配属について丁寧な説明があることや、多様なキャリアパスに応じた人事制度があることなどが、これからの選ばれる企業の条件の一つになっていくと考えられます。
個人として「何を大事に、どのようなキャリアパスを構築していきたいのか」、企業として「その想いに対してどんな支援を行っていけるのか」。これからのキャリアについて対話し、互いに理解を深めていくことは、個人と組織のWin-Winとなる関係を築く上で重要なカギとなっていくでしょう。
(リクルート就職みらい研究所所長 栗田貴祥)