治療に使った院外処方の薬代は
金額にかかわらず世帯合算できる

 高額療養費の手続きで、もう1つ忘れがちなのは薬局で支払った薬代だ。

 前述のように、高額療養費は、個人ごと、1カ月ごと、医療機関ごとに計算する。また、70歳未満の人は、自己負担額が2万1000円以上であることが合算の条件だ。

 だが、院外処方の薬は治療の一環として見なされるので、その病気やケガの治療のために薬局で支払った薬代は、金額に関係なく病院に支払った医療費と合算して高額療養費の計算ができるのだ。

 たとえば、Bさん(30歳・会社員)はケガの治療で入院し、その治療に必要な薬を薬局で出してもらった。入院にかかった医療費は50万円で、院外処方で調剤された薬代は5万円だった(健康保険適用前の金額)。

 Bさんの月収は24万円なので、高額療養費の自己負担限度額は【図1の(エ)】の5万7600円だ。病院の窓口では限度額適用認定証を提示して、高額療養費の限度額である5万7600円を支払い、薬局では薬代5万円の3割である1万5000円を支払った。合計7万2600円を自己負担している。

 薬局での自己負担額は2万1000円以上ではないが、同じケガ治療のために医師から処方されたものなので、高額療養費を計算する時の合算対象になる。Bさんの高額療養費の自己負担限度額は5万7600円なので、健保組合に申請すると、1万5000円の還付を受けられるのだ。

 AさんやBさんのケースのほかに、1人の人が1カ月の間に複数の医療機関を受診し、それぞれの医療機関に支払った自己負担額が2万1000円を超えていれば合算対象になる。

 このように世帯合算を利用すれば、高額療養費はさらにお得に利用できるのだが、制度があることを知らずに損している人もいるのではないだろうか。

 健康保険の各種給付金を受ける権利は2年間で消滅する。高額療養費は、診療月の翌月1日から2年以内に申請しないと、給付を受けられなくなってしまう。

 年が明けると、確定申告の医療費控除の受付が始まるが、支払った自己負担額の一部が直接戻る高額療養費のほうが取り戻せるお金ははるかに大きい。

 家族でも、共働き夫婦で別々の健保組合に加入しているようなケースは合算対象にはならない。また、高齢の親を扶養している場合も、75歳以上で後期高齢者医療制度に加入している場合も合算対象にはならない。

 だが、専業主婦の妻や子どもなど、同じ健康保険に加入している家族の医療費は、2万1000円を超えれば合算できる。最近、高額な医療費を支払ったという人は、合算できる医療費がないかどうかを確認して、時効が来る前に早めに手続きしよう。