年の瀬の12月26日朝、日本航空がサイバー攻撃を受け、国際線・国内線71便が遅延し、27日と合わせて5便が欠航するなど混乱が発生した。しかし遅延や欠航の発生はこの件に限った話ではない。近年、航空業界では欠航や遅延が相次ぐ。こうした定時運航率の低下には、ある事情が存在している。(ダイヤモンド編集部 田中唯翔)
71便が遅延、5便が欠航
JAL、サイバー攻撃で大混乱
12月26日午前7時半ごろ、日本航空(JAL)のネットワーク機器で障害が起き、システムに不具合が生じる問題が発生した。大量のデータ送付によって、サーバーに負荷をかける「DDoS(ディードス)攻撃」を受け、国内線、国際線の両方合わせて71便で30分以上の遅延が発生し、他にも自動手荷物預け機が使用不能になるなど、年の瀬の空港に大混乱を招いた。
同日午後1時20分には障害の原因が特定され、システムは復旧したものの、230人が搭乗を予約していた東京発出雲行きJL287便をはじめ、翌27日の便を含む合計5便が欠航になり、障害の余波は翌日まで続いた。
「年末年始は航空会社の書き入れ時のため、サイバー攻撃の影響が大きい。今回のようにエンジニアの人員が休暇で減りかねないタイミングを狙った攻撃は少なくない」。航空経済紙「Aviation Wire」編集長の吉川忠行氏はこう分析する。
12月23日にJALが発表した年末年始の予約状況を見ると、この期間の国内線の総予約数は前年同期比8.8%増の約108万人で、一年の中でも旅客需要が増加するタイミングだ。それだけに今回のサイバー攻撃で生じた国内線の遅延は、より多くの利用者に影響が出た。
しかし、こうしたサイバー攻撃による遅延だけではなく、実は近年、定時運航率(全体の便数に占める出発予定時刻以降15分以内に出発した便数の割合)が低下している。例えば、コロナ禍前の2018年度のJALの定時運航率は89.91%だったが、直近の23年度には84.75%と約5.2ポイント低下している。
その背景には、ある事情が存在している。以前より遅延や欠航が増える中で、今回のようなシステム障害が発生すると、利用者の利便性はダブルパンチで低下する事態に発展しかねないのだ。
JALや全日本空輸(全日空)など大手の航空会社ほど影響を受けやすい、その事情とは何か。詳細を次ページで解説する。