学生時代に学ぶべきは
「金利の知識」と「金融の歴史」

 これから学生が銀行に就職する場合、銀行の概要を覚えることも有用だが、それよりも「金利についての知識を身に付けておくことが重要だ」と大槻氏は話す。特に、低金利時代しか知らない上の世代と差別化できる強みになるからだ。

 特に借り手は、これまで金利をあまり気にする必要がなかったが、今後は変動金利がいいのか、固定金利がいいのか、メリット、デメリットを推し量りながら融資を受けることになる。そのため、銀行員は貸し手として、しっかりそのことを理解し、説明できなければならない。

 もう一つ、金融の歴史に関する知識を深めるべきだ。インフレーションや金利上昇などの話題は古くからあり、その背景を理解することが強みとなるからだ。

 できれば、高度経済成長が終わる1970年代までさかのぼり、幅広い金融知識を仕入れることが推奨される。なぜなら、8%を超えていた金利がなぜゼロ金利になったのか、その大きな流れを金融政策と共につかめるからだ。

 バブルや不良債権問題に関しては、1985年のプラザ合意から始まり、為替制度が変わって1ドル360円の固定相場が崩れて変動相場制に移行したことが背景にある。これに対応するため金利を調整した結果、バブルが発生した。そこで生まれた不良債権の処理を経て、ゼロ金利に至ったという大きな流れがある。

 こうした歴史を押さえておくことで、面接官に対して「若いのに知識がある」とアピールできる可能性がある。また、そうした知識が薄い現役銀行員も多く、スタートダッシュで少しでも差を埋められる。

銀行業界で注目される職業と
出世を目指すルートは?

 銀行業界ではプロフェッショナル職への報酬アップの機運が高まっている。数年後には有価証券のトレーダーや投資銀行部門など、銀行に直接利益をもたらす分野のプロフェッショナル職の給与水準が上がる可能性がある。

 こうした分野では、経験と知識が評価されやすい。

 銀行業務においても、M&Aやコンサルティング、リレーションシップバンキングなど、法人向けの業務が重要視されており、これらのスキルを磨くことがキャリアアップにつながるだろう。

 地銀や信金においては、中小企業への支援を通じて地域密着型の業務に興味がある人にもチャンスが広がっている。大企業だけでなく、中小企業をサポートする役割もソリューションビジネスとして注目されており、地域に根差した活動をしたい人にとっては選択肢が広がる。

 銀行業界で出世を目指す場合、さまざまな部署での経験を積むことが一般的だ。特に、メガバンクでは、本部や地方の支店を巡るローテーションが不可欠となっており、海外勤務の経験が求められることもある。

 役員に上り詰めるには、一定の経験を積んだ後、さらに企画部門や人事など、会社全体を見渡せる部署での業務経験が重要視される。