英語が完璧に話せるかどうかは
世界で活躍することには関係ない
ここから先は筆者の想像に過ぎませんが、浅野さんはこのようなスピーチで伝えたかったことがあったのではないでしょうか? それは、「英語力とは関係なく、日本人俳優は世界で通用する、自信を持ってほしい」といったメッセージです。
そもそも『SHOGUN 将軍』は、米国で制作されたドラマですが、劇中のセリフの約7割が日本語です。それでも、「Disney+(ディズニープラス)」で世界配信され、英語をメーン言語としない人々も数多く視聴し、高い評価を受けました。
また、ゴールデン・グローブ賞の投票権を持つ人も、近年はアメリカ人に限らず多様化しているといわれています。そうした背景を踏まえると、俳優業は英語ができなければ世界では通用しないとか、英語ができるのが大前提というのは、やや時代遅れな気もします。
実際に今回の日本人俳優の授賞は、「英語が完璧に話せるかどうかは、俳優として世界で活躍することには関係ない」ことを証明して見せました。
浅野さんは受賞後のインタビューで(日本語で)、「今後の日本人俳優の世界での活躍を期待する」と語っています。また、真田さんも「SHOGUNが言葉の壁を壊した。大きな門がアジアの国々に開けた。その土壌に次からまた、クルーもキャストも橋を渡って来られる状況が作れた。可能性は大きく広がった」とコメントしています。
こうしたメッセージは、全ての日本人にとって意味があることだと思います。日本人の個々の能力は高く、世界に通用するものです。しかし、英語ができないがゆえに日本に閉じこもりがちです。
自分の専門分野や強みがあれば、自信を持って世界に出るべきです。出た後に英語をマスターして、さらに高みを目指せばいいのです。そうした意味でも、浅野さんも真田さんも全ての日本人のロールモデルとなり得るでしょう。
お二人は、ゴールデン・グローブ賞の授賞式から、日本に向けて共有したい「志」のようなものを訴えかけていたのかもしれません。少々大げさかもしれませんが、そうしたことを強く感じさせるスピーチでした。