経済専門家の意見が届かない習近平政権
中国国債の格下げ&資金流出の恐れ

 スマホなどにも買い替え補助金が支給されることで、今後はファーウェイの新型折りたたみスマホなど、最新機種への乗り換え需要は増えるだろう。一時的に、中国の個人消費は持ち直し、景況感に改善の予兆が出る可能性はある。

 今回の買い替え支援策には、米トランプ政権への備えという意味もありそうだ。トランプ政権が、半導体や人工知能(AI)分野で対中輸出を厳格化し、禁輸措置を拡大する可能性は高い。そうなる前に中国政府は、産業補助金に加えて買い替え支援を実施し、主要企業を支援しようとしているとみられる。

 問題は、個人消費の増加がどれだけ持続するかだろう。新エネ車への補助金を拡充して以降、中国ではEVやPHVの値下げ競争が輪をかけて激化した。この影響から、IT大手の百度(バイドゥ)、自動車大手の吉利(ジーリー)が共同出資したEVメーカー極越(ジーユエ)が経営破綻したことは衝撃だ。買い替え補助金が始まってから増産に踏み切る企業は増え、結果的に過剰な生産能力が深刻化し、値下げ競争が激しくなる可能性は高い。

 一方、消費者物価指数などの主要データからも分かるように、中国経済の需要は不足している。これまで不動産投資が支えてきた経済成長メカニズムは明らかに行き詰まっている。雇用・所得環境も不安定化しており、住宅ローンの返済困難者が増えていることから住宅の差し押さえ件数も増加傾向にある。

 家計の節約心理が高まっているので、企業が新しい需要創出を目指して研究開発や投資に活発になるのも難しい状況だ。中国の政策には、もっと経済の専門家や実務家の見識が生かされるべきだろう。抜本的な景気支援策に取り組むことが必要なはずだ。

 現在のような政策運営を続けると、いずれ国債発行が増加し過ぎて財政の悪化要因になり得る。世界的な信用格付け業者が中国国債を格下げし、資金流出が増加する恐れもある。年が明けて約1週間の中国株や人民元の動向は、そうした展開を警戒する見方を反映しているといえるだろう。