――浅野さんの魅力とは?どのように評価しますか?

 浅野は、出演した全てのシーンで観客を魅了しました。彼は、ヤブシゲ(作中の樫木藪重)を演じる中で、シーンごとに要求されるキャラクターを見事にこなしていました。キャラクターを多層にして深みをもたらす、これぞまさに演技の偉業です。

 助演男優賞の受賞に最もふさわしかったと思います。どのシーンでも彼は生き生きと演じていましたから。まさに彼はthe best。助演男優賞どころか、主演男優賞レベルと言ってもいいほどです。

浅野忠信『SHOGUN』の演技が「日本語」でも世界に絶賛されたワケ【専門家が解説】アリソン・ハーマン/コロンビア大学卒業。The Ringer誌で最初のTV批評家として活躍し、2023年にハリウッドの定評あるエンターテインメント紙であるVarietyに引き抜かれ、現在に至る。TV批評の他にコラム、特集記事を担当。TV批評ではベテラン記者として有名。(本人提供写真)

――なるほど。私もさまざまな評価コメントを予習してきたのですが、「SHOGUNの魅力の50%以上は浅野忠信にあった」というのもありました。この意見に同意しますか?

 パーセンテージを言うのは難しいですが、彼が演じるヤブシゲは、原作小説や昔のドラマシリーズの時とは全く違っていたことは確かです。日本語ネイティブでないオーディエンスも、彼の演技に魅了されたのです。

 浅野の演じるヤブシゲは、少し威嚇的で、少しばかげている。狡猾でずる賢い。つまり、人間のありとあらゆる顔をのぞかせているのです。にもかかわらず、話している相手に、本当の顔を見せることはほとんどありません。

 ネタバレになりますが、最後に彼が命を落とすとき、その喪失感たるや…きっと私以外の視聴者も、痛切に感じたことでしょう。すでにシーズン2と3の製作が決定していますが、浅野の演技がとても恋しくなると思います。