――SHOGUNに続いて、日本の時代劇が世界で評価されるニーズはあると思いますか。

 ええ、SHOGUNが、新たな投資の扉を開いてくれることを願っています。つまり、今までとは全く異なる種類の時代劇です。

 個人的には、MAX(ケーブルテレビ局)で放送された、渡辺謙やアンセル・エルゴート出演の『Tokyo Vice』 (トウキョウ・バイス)という連続ドラマも大好きですけど、それは白人がアメリカから日本に行くことから始まる、よくあるストーリーです。

――SHOGUNのような作品をつくるために、どういう点に注意すべきだと思いますか。

 SHOGUNは、自分たちの主題を真っ直ぐ突き通すことに情熱を捧げました。つまり、従来作品にあったような「ねじ曲げ」が起きないように、非常に綿密であったということです。

 翻訳のプロセスの例を挙げましょう。今の時代、AI翻訳に任せることだってできるでしょう。しかし、SHOGUNでは、まず英訳したあと、その英文から日本語に訳し戻したものと、元の日本語を比べるという、信じられないほど綿密なプロセスを経ています。

 視聴者も、その異常な努力が感じられるほどです。制作側の努力を感じると、キャラクターへの感情移入も高まります。特に時代劇では、原作を理解し表現する努力があればあるほど、何らかの形で報われるものだと思います。

 絶対にやってはいけないことは、西洋の視点が最も正しいとか、観客にとって最も親しみやすいとか、そういう特権的な見方をすることです。

――最後に、アカデミー賞は白人偏重だと言われていますが、ゴールデン・グローブ賞はどうですか。選考基準に差別や偏見があるとか、古い価値感が残っていませんか。

 アカデミー賞の選考は、約1万人で構成されるAcademy of Motion Picture Arts and Sciencesという組織が行います。主にアメリカの映画業界の人たちですね。近年は、人種差別的だと非難を受けて、以前よりは白人男性が少なくなり、非アメリカ人も増えて多様化している最中です。例えば、インド映画『RRR』のオリジナルソング『Naatu Naatu』は、2023年の歌曲賞を受賞しています。

 エミー賞は、アメリカのTV業界の人が主に投票します。グローブ賞は、Hollywood Foreign Press Association(ハリウッド外国人映画記者協会)の約300人のメンバーが投票するので、アメリカ人以外が約3分の2を占めます。

 そういう意味では、エミー賞よりもグローブ賞の方がはるかに高い価値があります。国際的にどれくらい評価されているかが分かるからです。

真田広之『SHOGUN』と、トム・クルーズ『ラスト・サムライ』の圧倒的な違いインタビュー時のショット