――日本のニュース記事で真田さんは、「SHOGUNでこだわったのは、日本の歴史や文化を忠実に描くことだった」と語っています。これまでも日本以外の国が制作した、日本を舞台にした映画やドラマは複数ありましたが、それらとSHOGUNは違いますか?

真田広之『SHOGUN』と、トム・クルーズ『ラスト・サムライ』の圧倒的な違いアリソン・ハーマン/コロンビア大学卒業。The Ringer誌で最初のTV批評家として活躍し、2023年にハリウッドの定評あるエンターテインメント紙であるVarietyに引き抜かれ、現在に至る。TV批評の他にコラム、特集記事を担当。TV批評ではベテラン記者として有名。(本人提供写真)

 例えば、『ラスト・サムライ』(エドワード・ズウィック監督、2003年)は、世界的にヒットしましたが、欧米の主に白人の観客に向けて日本を魅せるために、ステレオタイプに固執していました。主人公は白人の西洋人であることが前提でした。

 一方で、SHOGUNが非常に優れている点は、全く別のところにあります。500年前の文化的価値を理解するのに役立つことです。これは、他の映画やドラマ作品で、そうそうあることではありません。

 ネタバレになりますが、アンナ・サワイが演じる賢いキャラクターは、最後に自ら死を選びます。その理由はなぜか、それは作品を通して十分に観客に向けて説明されています。

※編集部注:SHOGUNではその他の登場人物による切腹シーンも出てくる

 自ら命を絶つことに関して、現代社会にはある種の偏見があるというか、非常にショッキングなこととして受け止められます。しかし、SHOGUNでは、自死について当時の日本における価値観を繊細かつ分かりやすく描いています。現代の観客に対して、リアリティを忠実に伝えていると思いました。

 SHOGUNでは、主演の真田もアンサンブルの一員に徹しています。SHOGUNは、観客を信頼することで、従来の作品とは一線を画していると思います。

――観客を信頼するというのは、どういう意味ですか?

 登場人物に感情移入するための橋渡しは必要ないという意味です。登場人物を彼ら自身の光で描き、優れた俳優を起用し、優れた繊細な脚本を書くだけでいい。その世界観にどっぷり浸かれば、ガイドなど必要ないということです。この点が、SHOGUNと他の作品の大きな違いです。