「いつも気を使い過ぎて、心が疲れてしまう」「このままで大丈夫なのか、自信がない」と不安になったりモヤモヤしてしまうことはないでしょうか? そんな悩みを吹き飛ばし、胸が晴れる気持ちにしてくれるのが『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』です。悩む人たちに40年以上向き合ってきた精神科医が、自分の娘に「どうしても伝えたかったこと」を綴った本書は、韓国で20万部を超えるベストセラーとなりました。本記事では、その内容の一部を紹介します。
「お金が目的」の人は人生を無駄にする
人はお金をあまりにも抽象的に考える傾向がある。
「少なくとも○千万はないと老後が不安だ」「○億あれば金持ちだ」などと言うが、実際、若い人ほど金銭感覚が曖昧でお金の価値を正確に把握できていない。
いくら他人が高給取りで高い車を乗り回そうが、あくまで彼らのお金の話。
自分の幸せには本当にそこまでのお金や車が必要なのだろうか? そしてそのお金や車を得るためにどれだけの時間と労力が必要なのだろうか?
だから、お金に振り回されないためにも、自分はいくら稼げば十分なのか、ニーチェの言う「個人の独立と自由」が可能な額を把握する必要がある。
その上で、身の丈に合った資金で実現可能な、具体的な幸せを考えればよいのだ。
メルボルン大学ビジネススクールのジョン・アームストロングは、お金との関係において最も理想的なお手本として、ドイツの文豪ゲーテを挙げている。
ゲーテはお金に無頓着というわけではなかったが、過度に心配することもなかったという。
裕福な家に生まれたゲーテだったが、自立を希望し、必要経費を稼ぐために弁護士から政府顧問へと職も変えた。彼は仕事も手を抜かず、すべての収入と支出を事細かに記録していた。
そうして得た経済的自由と安定を基盤として、美しい文章を書いた。
やるべき仕事と、自分が本当に大切にしている執筆活動との間でバランスを崩さなかったのである。
お金で泣かないためには、お金を知る必要がある。
お金に対してどんな哲学を持つのかによって、4千万ウォン〔約430万円。韓国の会社員の年収中央値と近似。’22年韓国統計庁〕の年収に感謝することも、1億ウォンの年収に不満を感じることもある。
あなたも早いうちにお金について明確な哲学を持ち、具体的に考えてほしい。
自分なりの哲学があれば、もっと年俸のいい職場に転職すべきなのか、今、家を買うべきなのかといったリアルなお金の話も後悔せずに選択することができるから。
「お金を汝の召使いとしなければ、お金は汝の主人となるだろう」
哲学者フランシス・ベーコンも言っているように、お金が手段ではなくそれ自体が目的になると、人生は途端に無味乾燥で不幸なものになる。
人はお金に対して主導権を握り、使う側でいなければならないのだ。
私もこの年になって思うが、お金の役割とは、自分を守り、やりたいことをやらせてくれること。
加えて、社会に対して少しでも貢献することができれば、それで十分なのではないだろうか。
(本記事は『精神科医が娘に送る心理学の手紙――思い通りにならない世の中を軽やかに渡り歩く37のメッセージ』の一部を抜粋・編集したものです)