三田紀房の投資マンガ『インベスターZ』を題材に、経済コラムニストで元日経新聞編集委員の高井宏章が経済の仕組みをイチから解説する連載コラム「インベスターZで学ぶ経済教室」。第156回は「短期トレードに強い人」の意外な特徴を明かす。
投資行動における男女の違い
「道塾のジゴロ」と呼ばれる希代のモテ男・ゼンさんは、女性に安心感を持ってもらうキーワードに「運用」を挙げる。浪費や投機に走らず、賢く資産を築く知識とマインドを持った男性が魅力的に映る時代が来ていると説く。
個人差が大きいとしても、自分の子ども時代や子育ての経験から、男子の方が向こう見ずで危なっかしく、女子の方が慎重で行動に安心感があるという傾向があることに多くの人は異論がないのではないか。
私自身は三兄弟、自分の娘は三姉妹なので、「男子と女子でここまで『治安の良さ』が違うのか」と日々感じている。こうした性差は、投資行動においても男女の違いになって表れる。
少し古いデータになるが、資産運用のロボアドバイザーで国内トップのウェルスナビによると、自動積立機能を利用するユーザーの割合は男性(52.9%)よりも女性(58.1%)の方が高い。マーケットのタイミングを見極めて売買する「全額引き出し」を選んだことのあるユーザーの割合は男性が女性より2倍も高かったという。
浮かび上がるのは「淡々とコツコツ積み立て」という長期投資の王道への適性は女性の方が高いという姿だ。米国の調査では、男性の方が売買の頻度が45%も多く、運用パフォーマンスの低下を招いているというデータもある。
一方、短期売買では男性の方が女性よりも優位があるとされる。自信過剰気味に思い切ってリスクを取らないとトレーディングでは勝てない。危険とスリルを好む「男子心」が切った張ったの短期決戦では有利に働くわけだ。
「指の長さ」と短期トレード収益の関係
短期売買の素質があるか気になる男性読者の皆さんは、自分の手を見てみると良い。注目すべきは人差し指の長さ。薬指に比べて人差し指が短いほど、短期トレードに向いている可能性が高い。
プロのトレーダーを対象とした海外の調査では、この「指の長さの差」と短期売買の収益の間には明確な相関があることが分かっている。
裏側にあるのは「マッチョホルモン」の異名を持つ男性ホルモン、テストステロン。胎児の間に高いレベルのテストステロンにさらされると、人差し指が短くなる。
そして、そうした男性は平均よりもリスクを多く取ったり、言動が攻撃的になったりする傾向がある。このマッチョな傾向が、トレーディングにはプラスに働くと考えられる。
無論、こうした投資行動の性差が有利に働くためには、土台となる冷静な判断力が必要だ。いくらコツコツ投資が得意でも、投資対象を選ぶ際に適切なリスクをとっていなければ長期でも成果は上がらない。
恐れずにリスクが取れるからといって、ギャンブルのような無茶を重ねれば、いずれは破滅が待っている。何事もバランスが肝要なのは言うまでもない。自分の強みと弱みを把握して、客観的に己を御する視点を持ちたい。
蛇足ながら、この機会に自分の手を観察した方は、ついでに指の太さもチェックしてみるといい。
英語圏では株式や為替取引などでしばしば起きる誤発注のことを“fat finger”と表現する。指が太めの方は、売買数量や売り値・買い値をキーボードやタッチパネルで打ち間違えないよう、ご用心を。