空前の人手不足…なのに企業が「早期退職」を増やす納得の理由Photo:PIXTA

日本の雇用を支える中小企業こそ改革が必要だ

 わが国の雇用を支えるのは大多数の中小企業である。しかし、大企業と事業規模の小さい事業者とでは、賃上げなど人手不足への対応に格差が出ている。余裕のある大企業は賃上げを比較的行いやすい一方、中小企業にとって大幅な賃上げは容易ではない。産業ごとに商習慣もあり、価格転嫁も一筋縄にはいかない。日本銀行による最新の『地域経済報告(さくらレポート)』によると、賃上げ分の価格転嫁は依然として難しいとの声が散見された。

 そうした中、賃上げ以外の方策で人手不足に対応する事業者が出始めている。物流分野ではドライバー不足に対応するため、異業種を巻き込んだ共同配送が増えている。荷物を載せて運ぶパレットを規格統一する議論も進んだ。こういった取り組みも、中小企業の事業運営の効率性向上につながるだろう。

 資本・業務提携やM&A(企業の合併・買収)戦略を重視する中小企業も増えている。事業継承に加えて、人手不足を克服するために他社と事業を統合する、あるいは自社の事業を売却する事業主が増えているのだ。事業統合した企業は、従来よりも少ない人員での業務が可能になるだろう。

 この中小企業の事業統合やM&A増加が労働市場に与える影響は、今後ますます注目されるだろう。統合により経営体力が向上することで、中小企業でも人材開発戦略が実行しやすくなる。退職者が出た場合も、既存の人員で事業の効率性を高める余地が拡大するはずだ。

 25年は、中小企業も早期退職を募り、人材の新陳代謝の向上を目指すことが増えるかもしれない。中小企業のM&Aの重要性が高まることも、わが国の労働市場の流動性の向上を支える要素になると考えられる。