「金利の相場観」を身につけるには
住宅ローンの契約を行う際に、金利の相場観を持つことが重要です。金利の相場観とは、将来の金利動向を予測する力です。これまでの経験則、あるいは政治や経済、金融の各分野のさまざまな状況から判断して相場動向を見極めることになります。
金利は資金の貸し借りの価格であり、経済全体の状況を反映する重要な指標です。国内外の経済指標や金融市場の動き、中央銀行の政策、国際情勢など、多岐にわたる情報の収集と分析が含まれます。自身の金利の相場観を基準に将来の金利シナリオを描くことができれば、それに基づいて住宅ローンの選択や投資判断を行うことが可能になります。
金利シナリオを描く際は、市場金利や経済指標の動向、中央銀行の金融政策など、さまざまな要因を考慮します。市場金利の動向は、住宅ローンの金利に大きな影響を与えます。
銀行は市場からの資金調達コストに見合うように自行の住宅ローン金利の水準を決めるため、市場の長期金利が上昇すれば新規契約の住宅ローン金利も上昇することが多くなります。10年物国債の利回りが上昇すると、その後遅れて銀行が住宅ローン金利を引き上げたとニュースになるので、個人でもその動向を容易に知ることができます。
経済指標も住宅ローンに大きな影響を与えます。インフレ率や失業率などの指標は経済の基礎的条件として経済全体の健全性を反映するため、これらの指標の動向を把握することが重要です。
具体的には、インフレ率が上昇すると中央銀行はインフレ抑制のために政策金利を引き上げる可能性が高くなります。政策金利を引き上げれば市場金利は上昇し、住宅ローン金利も上昇することになります。また、経済の持続的成長が続いている場合、失業率の低下は金利上昇圧力につながる場合があります。
経済指標の動きによって金利が変動するのは、次の二つのケースです。一つはその経済指標が金融政策を動かすと市場がとらえる場合。もう一つは、発表された経済指標が、その時点で市場が織り込んでいた景気や物価の水準と異なることを明らかにした場合で、そうなると再度金利が新たな水準まで修正されることになります。
中央銀行の金融政策も住宅ローン金利に直接の影響を与えます。特に日本の金融政策決定会合やアメリカの連邦公開市場委員会(FOMC)、ユーロ圏のECB理事会など、直接金融政策を打ち出す会合での声明文など、政策関連の発表からは目が離せません。会合に参加する個別の理事などの発言も金利を大きく動かす場合があります。