現代の日本と比べると、当時の食糧事情の方がはるかに悲惨だったと考えます。しかし米がとれない、米不足、米が値上がりして庶民の生活が困窮している点では、今の日本と同じです。

 ここまでのところ、天明年間の江戸の町は令和の日本と何となく似通ったことが起きているのですが、その先の未来にはいったい何が起きるのでしょうか?

「クリーンな政治」だけでは、国は良くならない

 この後、官邸ならぬ江戸城で大事件が起きます。江戸時代の話です。田沼意次は息子の意知を若年寄に取り立てます。異例の出世なのですが、その意知が江戸城内で暗殺されます。この事件をきっかけに田沼意次は勢いを失います。

 こういったとき、政府で何が起きているのかを庶民に伝えるのはメディアの役割です。蔦屋では意知の刃傷沙汰を題材にした読み物を発売し発禁処分になります。

 田沼意次は失脚して、江戸では政権交代が起きます。後を継いだ松平定信はそれまでの腐敗政治を正しクリーンな政治を行おうとしたのですが、残念なことに世の中は良くはなりませんでした。

 今にして思えば、政治の対立軸を腐敗からクリーンへと切り替えても政府の内部が浄化されるだけで政治が良くなるわけではありません。経済政策を引き継いだ松平定信は、田沼時代とは違い、国民に我慢をさせてなるべく消費をさせない倹約政策を打ち出します。

 庶民が倹約すれば経済は停滞し、生活はさらに苦しくなります。

 そもそも江戸初期には四公六民で、元禄時代には実質的に税率は3割(三公)程度まで引き下げられ経済が好況だったところから、意次や定信の時代には五公五民まで税率が引き上げられています。

 そこを改革しないあたりは、当時の政治は今の政治とよく似ています。

 令和の時代、最近の日本では世の中が停滞し、少なからずの若者が未来に無関心になるにつれて、振り込め詐欺や闇バイトによる強盗が増加します。江戸時代はどうだったのでしょうか。