日本銀行は、日本を普通に金利のある国へ復帰させるべく、着々と利上げを進めている。しかし、「日銀『が』」と、日銀が主体的に決めているという視座では、利上げの進捗を的確に捉えきれない事情がある。日本のデフレ克服機運、企業の改革・賃上げの好循環ムードは、「米国事情『が』」が許す限りという他力本願の部分が今も小さくない。そこにトランプ2.0が重なる。外部条件と日銀政策の相場インパクトと投資対応を考える。(楽天証券グローバルマクロ・アドバイザー TTR代表 田中泰輔)
日銀利上げで政策金利は
17年ぶりの高水準に
日本銀行は1月24日の政策会合で0.25%の利上げを決定した。2024年7月以来の利上げで0.5%水準となり、17年ぶりの高金利水準である。脱デフレのステップがいかに困難かがうかがわれよう。
国内経済では、24年春闘以来、賃上げはほどほど進んでいる。しかし、インフレ分を除く実質賃金は増えていない。ここまでの実質賃金の減少分の埋め合わせには程遠い。まして、インフレタックス、社会保険料の引き上げによって、家計の手取りは減少し続けている。内需の観点からは、利上げを正当化しにくい。
日銀が法律上、責任を負うのは内需、景気ではなく、インフレである。そのインフレは24年12月のCPI(消費者物価指数)が前年同月比3.6%、24年の大半は2%台後半で推移した。一方、変動の大きい食品とエネルギーを除くコアコアCPIは12月が2.4%だ。
以上の数字パズルからは、円安による輸入価格上昇がインフレの主因と、容易に推察されよう。食品やエネルギーという輸入比率が高い項目、輸入材料に多くを頼る業種の価格は上昇している。しかし内需が弱いため、国内価格に転嫁しにくくなっている。
一方、人手確保に腐心する企業は賃上げするが、それも価格転嫁できるか微妙なステージにある。
こうした経済状況下で、日銀は利上げを継続していけるのか。先行きを読むための視座を次ページで提供する。