しかし残念ながら幸せは売り物のように、買えるものではない。宝くじにあたっても手に入るものではない。
「消費社会は価値の公害をまき散らしている」(注2)
ブランド商品は本当にそんなに価値があるのか?
セレブの生き方にそんなに価値があるのか?
今の消費社会では、「幸せ」とうつ病とが共存する。もちろん「幸せな人」とうつ病になるような人とが共存しているように見えるのは、「幸せな人」が幸せに見える人だからである。そしてその幸せはもちろん偽りの幸せである。
このような人たちを現代人症候群という。
自分が不幸であるということを知らないで、幸せと思っている不幸な人たちである。
だから人々が優しくない。なかなか親しくなれない。心のふれあいがない。
経済的に豊かになりながら、うつ病が増加する。
バブル時代の「笑顔のうつ病」
消費文化の「幻想」に頼っていた
バブル経済の時代に、私は企業をはじめ色々なところから講演を依頼された。私は必死でうつ病の増加を訴えた。新入社員の研修ではうつ病にならないような心構えを話した。
しかし時代は浮かれていた。現実にはうつ病者は増加していたのに、人々は幸せの幻想にとりつかれていた。
バブル経済の時代は、「笑顔のうつ病」の時代だったのかもしれない。
消費社会の決定的な間違いは、人々に幸せになることをあまりにも安易に考えさせたことである。
もう1つはそれと表と裏のような関係であるが、消費文化の中で、「これが幸せ」と言うものを手に入れられなかった人である。
こういう人たちは、不幸ではないのに、不幸だと思ってしまう。
心理的に成長していれば、決して不幸とは感じないのに、成長していない場合には不幸と感じる。
消費社会の中で、成功者も失敗者もともに不幸になる傾向がある。
消費社会の中で幸せになるためには、いよいよ心理的成長というのは重大になってきた。
人々は、どうしようもなく落ち込んだ気持ちを立て直そうとして、消費文化の「幻想」に頼ることがある。ブランドものを身につけることで、何とか落ち込んだ気持ちを治したい。