あるいは、製造業の領域でも産業用ロボットの普及などによってファクトリーオートメーションが大きく進展している。

 一方、介護や建設、運転の仕事など身体的な作業を伴う仕事を人手に頼らず処理しようとなると、ロボティクスやセンサーなど高度な技術が必要となる。

 しかし、現状の技術水準において、資本コストに見合うだけのパフォーマンスを発揮できるロボットはそう多くない。こうした事情がホワイトカラーの仕事の人余りが発生する一方で、現場仕事の人手が大きく不足する背景にあると考えることができる。

慢性的な人手不足の根本原因は
アベノミクスと少子高齢化

 2010年代半ば以降を境に、労働市場の需給構造は逆転し、現場で働く労働者を中心に人手不足が顕在化している。

 これまで日本経済では慢性的な需要不足が続き、デフレーションが進行してきたにもかかわらず、それがここにきて供給制約に転じた理由は何だろうか。

 第1の要因としてあげられるのは、これまでの経済政策による影響である。アベノミクスによって始まった日本銀行による異次元金融緩和や政府による大規模な財政出動が経済を過熱させ、それが労働市場の需給をひっ迫させている側面があるはずである。

 第2の要因は、人口動態の変化に伴う構造的なものに求められる。つまり、少子高齢化による人口構成の変化が需要を相対的に拡大させていると考えられるのである。

 少子高齢化がなぜ需要の増加や労働市場の供給制約につながるのだろうか。

 確かに労働の供給面に目を向ければ、高齢化が進んだときに働ける人が少なくなることは明らかだ。ただ、その一方で、需要面に目を転じれば人口減少は同時に消費者の減少につながるわけであり、これはすなわち総需要の減少にもつながりうる。

 人口減少が進展したとき、人手が少なくなることで経済全体の供給能力が低下するのと同時に、消費者も減れば需要も同程度減るのではないかと、多くの人は疑問に思うのではないか。

 その答えは、人々の消費構造を分析することで理解することができる。つまり、人は高齢になるほど人手を必要とするサービスをより多く需要するのである。