並びやすいし荷物を置きやすい
ラーメン二郎本店のY字路活用術
Y字路にある名店として有名な例を1つ紹介しよう。野菜と肉がたっぷり乗ったラーメンでおなじみの全国チェーン「ラーメン二郎」は、Y字路に本店がある(写真6)。有名チェーンの本店ということで多くの観光客が訪れるほか、慶應義塾大学三田キャンパスに近いことから塾生の来店も多い。
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この店では常に行列が絶えないのだが、その行列をさばく上ではY字路がうまく機能している。行列は店の入口から角を曲がって裏側に回り込むように整理されており、さらに列がのびると右側の道にはみ出すことになる(写真7)。
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このY字路は、もともとは右の道しかなかったところに、左の道が新たに開通することで形成された。右側の道はすでに交通路としての役割を左側の道に譲っており、多少行列がはみ出ても支障はない。もしここがY字路でなければ、行列はもっと混乱をきたしていただろう。
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店内はカウンター席のみで狭いため、大きな荷物を持った客は荷物をおろすように言われる。そのときに荷物を置く場所が、三角形の隅のスペースなのだ。二郎本店は、店内でも店外でもY字路空間を存分に活用している。ラーメンが着丼したら急いで黙々と食べるべし、という二郎のスタイルは、狭いY字路角地という物理的形態によって生まれたものではないだろうか。
これはまったくの私見だが、Y字路にある店は名店が多い。角地は印象に残りやすく、三角の店内は空間体験を豊かにする。Y字路は味覚でも楽しめるのだ。