ただし、あまりに角度が小さすぎると、そもそも建物を建てることができない。高低差を解消するためにできたY字路の場合、しばしばそういうことが起こり得る。建物があってこそのY字路だと思う私としては、これはあまり好きではない。鋭ければよいというものでもないのだ。
写真4は東大阪・新石切駅前にあるY字路で、三角形のかわいらしい建物が角地につっ立っている。「Try・アングル」というこれまたY字路らしい名前のブティックが中に入っていたのだが、数年前に閉店し、現在はたい焼き屋になっている。
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テレビ東京で放送されていた「空から日本を見てみよう」は、空撮映像を使いながら街を紹介する紀行番組である。この番組内に、トガった建物の角度を計測する「測れ!トンガリ計測部!」という人気コーナーがあった。番組は終了してしまったが、紹介されたトンガリ物件は今も番組ホームページにリスト化されている。そんなマニアックなコーナーが成立すること自体が驚きだが、今もときどきSNSで話題にする人がいることからするに、トンガリマニアは意外と多いようだ。
T字路にも見えるけど……
強引に自己主張する「鈍角Y字路」
Y字路はたいていどこかの角が鋭角になっているものだが、たまに鈍角だけで構成されたものもある。これを「鈍角Y字路」と呼ぶ。鈍角Y字路は地図上ではたしかにY字路なのだが、写真を撮ってみてもあまりY字路感はない。なぜなら、左右の道が見通せないからだ。また、鈍角だと残余地も生まれづらく、角地全体が建物で埋められていることも多い。
Y字路のY字路らしさは「鋭角」であることによって生まれている側面が大きい。その意味で、鈍角Y字路はY字路としてはいくぶんイレギュラーな存在と言わざるを得ない。どちらかといえば、T字路に近いY字路である。
写真5は名古屋の道徳というエリアにあるY字路だ。角壁面に「Yamamoto」とYの字がでかでかと描かれている。ここまで強く主張されては、Y字路と認めざるを得ない。
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