かつて多くの人たちに未来への期待をもたらした「オープンな交流」があったにもかかわらず、それを遮断したのはいったい誰なのか?
中国で、外国のSNSの多くがブロックされてからすでに10年以上が経っている。今、最もSNSを使いこなしている中国人ユーザーは、インターネットが「外網」と「内網」に分断された後にネットデビューした世代である。彼らにとって、ネットが「中国語の世界」と「英語の世界」に分けられていることは常態になってしまっている。
だからこそ、小紅書の米国人TikTok難民の流入に、彼らは驚き、「非日常的な情熱」を見せたのである。
トランプ氏が大統領に就任、TikTok禁止令の執行が延長された
実は、「TikTok難民が自身のタイムラインを乱す」と眉をひそめた人も少なくなかった。筆者が耳にしたケースでは、海外在住の中国人ユーザーで「1日中英語を使ってクタクタに疲れ果て、小紅書を開いてやっとリラックスできると思ったら、英語の波。勘弁して!」と苛立ちを隠さない人もいたようだ。
そうするうちに、IT系メディアが「小紅書が英語のコンテンツチェック担当者の募集を始めた」という噂を取り上げた。さらに、どこからともなく、「GPS付きのコンテンツをアップロードしないように」とか「地理関係が分かるような写真の投稿は避けるように」という呼びかけが広がり始めた。
流入した難民の中にはスパイが隠れているかもしれないから、というのである。
しかし、1月20日にトランプ新政権が誕生すると、彼はすぐさまTikTok禁止令執行の75日延長を宣言したことで、多くのTikTok難民たちはTikTokへと戻っていった。もちろん、小紅書に投稿を続けている難民たちもまだ少なからず残っているが、中国人ユーザーの熱意が冷めたとき、そして彼らが期待するような反応が返ってこなければ、彼らも次第に古巣へと戻っていくことになるだろう。
かくして、「民間米中大戦争」の勃発はギリギリのところで回避されたと思われた。だが、2月に入ってトランプ大統領は米国政府系ファンドの設立を進める大統領令に署名した。その目的は、中国政府系ファンド牽制ではないかという懸念が中国側で沸いている。そして手始めにTikTokを買収し、なんと米国で国有化とするのではないか、との憶測まで広がっている。
その時、TikTok難民たちは「主権者」になるのか? トランプ政権の今後の施策が注目される。