このとき、父川滝喜正は、13歳。正真正銘の少年Kである。岡山無警報空襲によって川滝少年が亡くなっていれば、私は生まれてくることができなかったのかと思うと、この戦争と私には、切っても切り離せないつながりがあるのだと実感できる。
この戦争は「つい昨日のできごと」であったのだ、と。
ページをめくると、岡山駅が出てくる。
漫画には、焼死体を目の前にして「ヒエーッ みんな黒コゲだ…」と叫んでいる川滝少年の姿が描かれており、そのそばに「岡山駅の貨物倉庫いっぱいに空襲で亡くなった人が300体も並べられている地獄図に大ショックをうける!」と書かれている。

想像してみる。13歳の私が300人もの焼死体を目の当たりにしている姿を。顔や手の焼けただれた人たちが担架で運ばれてくる姿を。場面としては想像できるけれど、私の抱いている感情は、うまく想像できない。正確に書くと、どんなに想像しても、現実は私の想像をあざ笑うだろう。68年以上も生きてきて、私は死体というものを目にしたことさえないのだから。