
作家、小手鞠るいの元に届いた、岡山に住む父からの小包。中身は漫画家志望だった父が半生を振り返った「マンガ自分史」だった。温かいタッチで描かれたマンガをSNSに投稿すると「戦争を描いているのにユーモアがある」と多くの反響が寄せられた。戦争体験を読んだ小学生からのまっすぐな感想とは――。※本稿は、小手鞠るい『つい昨日のできごと:父の昭和スケッチブック』(平凡社)の一部を抜粋・編集したものです。
死者44人、負傷169人
九死に一生の体験がバズった
無警報空襲、300体の黒焦げの死体、焼け跡の整理――の次のページに描かれている漫画は「ダダダダーン」から始まっている。白抜きの大きな文字。
父の乗っている通学列車を空から攻撃しているアメリカ軍の戦闘機。その下には「この日、グラマン機数十機来襲。列車の機関手他死者44人。負傷169人。幸い、田植えあとの水田を泥まみれで逃げて、九死に一生を得た」という父の姿。
1945年(昭和20年)7月24日のできごとである。
あれは、数年前の夏のことだった。私は何気なく、スケッチブックのこのページを写真に撮って、SNSに投稿してみた。8月だったし、なんとはなしに戦争の話題でも取り上げてみるか、というような軽い気持ちだった。
