企業・団体献金の禁止は、憲法違反なのか【池上彰・増田ユリヤ】1月29日、参議院本会議で答弁に臨む石破茂総理。所得税が生じる「年収103万円の壁」を与党案の123万円に引き上げた場合の経済効果について説明した Photo:SANKEI

企業・団体献金の禁止は憲法に抵触する?

池上 通常国会が始まり、自民党旧安倍派の裏金問題に端を発する企業・団体献金の是非について注目が高まっています。立憲民主党の野田佳彦代表は「3月末までに企業・団体献金を禁止する道筋をつけるべきだ」と言っています。

増田 これに対し、石破茂総理は「わが党は企業・団体献金は不適切とは考えておらず、禁止する理由がない。『禁止より公開』との考え方に基づき、透明性向上を図る」としています。加えて、「むしろ企業・団体献金の禁止は、表現の自由を定めた憲法21条に抵触する」とも述べていました。その後、野党からの指摘で答弁を修正、「法律学上、議論されなければならない」としています。

池上 石破総理がよっているのは1966年に最高裁判所の判決が出た八幡製鉄政治献金事件です。八幡製鉄(現日本製鉄)が行っていた自民党への献金に対し、株主である弁護士が訴訟を起こしました。最高裁では「憲法第3章『国民の権利及び義務』は可能な限り内国の法人にも適用すべきであり、政治的行為の自由もまた同様である」との判決が出て、政治献金を表明することを禁じる理由がない、としたものです。

 ただし、企業・団体献金を禁止することが憲法に抵触するか否かについては、さまざまな解釈があります。そもそも企業・団体献金は株主に配分されるべき利益の一部を献金しているため、見返りが前提となっているわけで、そうでなければ株主の利益を毀損したことになる。となれば献金を受けた議員は、全体の公益よりも献金のあった企業や業界の利益を優先するのではないか、それは事実上の贈収賄では、となるわけです。

増田 立憲民主党の案では「企業・団体献金を禁止(政治団体を除く)」となっており、国民民主党の玉木雄一郎氏は「抜け穴になる」と批判していますね。