日本では能登半島の地震や豪雨が大きかったことでそちらに注意が向きがちですが、昨年も全国各地で豪雨に伴う洪水や土砂災害が発生しています。
このような気候災害は海外ではさらに被害が大きくなっています。今年大きなニュースとなったロサンゼルスの山火事も、あそこまで被害が広がった背景要因の可能性としては気候変動が指摘されています。冬に吹く乾燥した風が以前よりも強く、そして長く続くようになったのはCO2の増加が関係しているというのです。
このままだと、日本でも2020年代後半の気候災害の犠牲者数は、増加の一途をたどるでしょう。ではどうしたらいいのか。ここでトランプ大統領の問題に話が戻ります。
問題は日本だけでなく世界中で「情報がおかしいこと」です。
脱石油、脱炭素については、どんなテーマに関しても真逆の情報が溢れます。例えば、太陽光発電は自然にいいという情報があれば、太陽光パネルは環境に悪いという情報もあります。EV化を進めるべきだという情報に対しては、EV化は欧州の自動車会社の陰謀でその野望はすでに破たんしているという情報も流れます。
どちらの情報が間違っているかというとそうでもない。どちらも正しいといえば正しい情報であることが往々にしてあります。ただ政策が対立する2つの陣営があるとしたら、片方の情報は都合がよく、もう片方の情報は不都合だという場合があり、それを自分の政策に都合よく切り取るような情報操作が行われます。
脱炭素に関して言えば、特にグローバルな石油業界では何十年も昔からロビイストが暗躍し、怪情報が飛び交う世界であることは少なからず常識となっています。現実に情報戦が行われているのです。
脱炭素には今、大きな逆風が吹いています。AIブームのため全世界でデータセンターの建設が進んでいて、予測では2040年頃には電力需要は現在の1.2倍以上に膨れ上がるとされています。そこでAIを推進するトランプ大統領は石油業界に対して「どんどん石油を掘れ」と言うわけです。気候変動を憂う人たちにとっては状況はどんどん悪くなっています。
「ウミガメ」と「水害のリスクがある地域に住む日本人」には共通の利害があります。それは気候変動を止めることが安心して生活できるための最大の目標だという事実です。どちらもなんとか脱炭素を進めてほしいと願っているのです。
そんな中、脱炭素にはメスをいれないけれども、国家レベルの情報操作にメスをいれるトランプ大統領は、単なる悪ではなく、この時代の矛盾点をかき回す狂言回しの役割を果たしているのかもしれないのです。
「ストローよりも優先すべき政策課題は何か」ということに気づかせてくれたことで、わたしたち日本人が未来に向けて行動を変えていくきっかけが生まれたとポジティブに捉えるのはどうでしょう。できれば「ウミガメのこともちょっと考えながら」です。