
損害保険業界の雄である東京海上ホールディングス(HD)。海外での大型買収を推し進め、今や修正純利益に占める海外事業の割合は6割を超える。そうしたグルーバルな保険グループにおけるCFOの役割は多岐にわたる。グループの資本政策はもちろん、成長投資に関わる多くの領域についてもCFOが関与し、グループの成長を牽引。長期連載『経営の中枢 CFOに聞く!』の本稿では、東京海上HDの岡田健司グループCFOに、その役割について話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)
成長投資とリスクマネジメントの両輪で
グループの事業成長を目指す
――東京海上グループが目指す方向性の中で、CFO(最高財務責任者)はどのような役割を担っているのでしょうか。
東京海上グループは、保険の引き受けと資産運用の両面で強い利益成長を続け、「世界トップクラスのEPSグロース」、つまり1株当たり純利益の成長の継続を目指しています。そうした中でCFOとして規律ある資本政策を実現することで、ROE(自己資本利益率)をグローバルピアに伍する水準にまで引き上げることを目標にしています。
世界中で展開している保険ビジネスから生み出される収益に加え、最近では政策株の売却を加速させていますので、それらから得た資金をいかに新たな優良投資に振り向けられるかが、資本政策の肝だと思っています。一方、いい投資案件がなければ株主還元に振り向けることも行っています。そういう資本循環サイクルを実行しています。
また、全体方針を作るだけでなく、国内外の事業の成長に向けて、各事業部門の経営幹部とは小宮暁CEO(最高経営責任者)の隣に座って膝詰めで話をするのも役割の一つです。
――リスクマネジメントも重要な役割ですね。
われわれ保険会社は健全性がとても重要です。どういったリスクを取るのか、どこまでリスクを取るのか、リスクに対するリターンやリスクの分散は適切かなど、「リスクベース経営」と呼んでいますが、いわゆるERM(Enterprise Risk Management)経営を根幹としています。小宮CEOもメンバーであるERM委員会がありますが、私が委員長を務めています。
むろん予測不可能な要素はありますが、この委員会ではグループ全体として最適な事業やリスクのポートフォリオになるように、常にフォワードルッキングで資本配分計画を決めています。リスクに対する資本の十分性や高い収益性を実現することで、企業価値の拡大を図っています。
加えて、株主や投資家とのコミュニケーションも重要な役割です。小宮CEOと手分けして国内外の投資家との個別ミーティング、アナリストとの面談などステークホルダーと意見交換を行うことで、経営の高度化に努めています。
――CEOの職務と大きな差はないように感じます。
東京海上ホールディングスの小宮暁CEOの右腕として辣腕を振るう岡田CFOの役割とは何か。次ページでは、コア業務であるグループの資本政策における要諦に加え、政策株の売却益の使途、さらには拡大を続けるCFOの役割について明かしてもらった。